669.パーフェクト

 たっぷたっぷ。

 砂コカトリスが身体を揺らしながら近づいてくる。


「な、なんだ?」

「ぴよ。どうやらお願いがあるらしいぴよ!」

「お願い……?」


 前にも何か、同じようなことがあったような。


 以下、ディアとの通訳。


「ぴよ……! ぴよよ!」(ぜひ……! 留学させて欲しいかなって!)

「それは構わないが、砂コカトリスの全員かな?」

「ぴよよー」(違うよー、ぼくとあと3人だけー)


 ん? そうなのか。全員じゃないんだな。

 ステラがふむふむと頷いている。


「なるほど、たまによくある現象ですね……」

「ザンザスのダンジョンでも見られますね。群れの位置を変える際に、先んじて何体かが住むのです」


 レイアが補足する。


「わふ。それっていつかは全員が来るってことなんだぞ?」

「ぴよ。でも最初から全員でもいいぴよね」


 ステラもうんうんと頷いている。


「そうですね、一向にそれでも構いませんが……。とはいえ、ぴよちゃんにはぴよちゃんの考えがありますからね」

「まぁ、海コカトリスと違って差し迫った危機はないからな」


 姉妹コカトリスはフラワーアーチャー、海コカトリスはリヴァイアサン。

 地下コカトリスはララトマに従って移住した。

 これまではそうしたことがあったが、砂コカトリスの危機は食料事情にまでは及んでいない。


「もちろん移住者は歓迎する」


 それがぴよぴよしていても。

 見極めたいというのも、当然の心理である。


 ディアからそれを伝えると、砂コカトリスのリーダーは羽をぴこぴこさせた。


「ぴよー!」(ありがとうー!)

「大歓迎です!」

「ウゴ、これからよろしくね!」

「わふ、ヒールベリーの村はいいところなんだぞー!」


 それからお互いに詳しい紹介をして、夜ご飯の時間になった。


 余談。

 砂コカトリスは『とある事柄』については、目を細めて俺たちを見据えた。


「ぴよ……」(えーと、ディアちゃんのお兄さんがこのウッドという人で、こちらのエルフがお母さん、着ぐるみで羽からご飯が出る人がお父さん、子犬なマルちゃんはほぼ姉妹……)


 じぃー……。


「ぴよ?」(この理解でいいの?)

「ぴよ! 完璧ぴよよー!」


 ……うん。完璧に理解できてるよ!

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