663.学会
午後から学会が始まった。
各地から集まった学者も時間がないようなので、かなりの突貫だが……。これは仕方ないな。
とはいえ砂嵐の規模の割りに被害が少なかったのは何よりだった。
「ここが会場ぴよねー」
学会の会場は吹き抜けの大広間だ。
紙を貼ったパネルがところ狭しと並び、椅子と机が置いてある。
「ウゴ、たくさんある!」
「わふー。パネルが多いんだぞ」
「冊子もあるが、やはり見るのが主だな」
このあたりはヴィクター兄さんから聞いていたが。
輸送が整っていないこの世界では、持ち運べる紙にも制約が多い。
全員に配るほどの冊子を用意するのは不可能なのだ。
なのでパネル式の展示がほとんどなのだ。
冊子はあっても少数で、気になる研究があれば自分で書き留める。もしくは連絡先を交換するとか、か。
「ぴよ。レイアぴよはどこぴよ?」
「ザンザスに関係するところを重点的に行くそうだ」
さすがに手ぶらで帰るとザンザス議会に怒られるらしい。
「ぴよ! かあさまは…………人気ぴよね」
今、ステラは学者に囲まれて質問攻めにあっていた。
「このバットに特殊な加工が……?」
「特にありませんが……」
「どうやって効率よく精霊を……?」
「魔力の核を打ち抜くと……」
「どうやって魔力の核を見抜いて……?」
「バットと一体になれば……」
「やはりこのバットに特殊な加工が……?」
「特にありませんが……」
ふむ……話題がループしているな。
学者たちは真剣だが、ステラの特異性を理解できないでいるらしい。
まぁ、超人的能力でバットを振ってるだけなんだが……。
「とりあえずこのバットを振れば、精霊を倒す役に立つかと……。こんな風にしゅっと振ると……!」
ステラがすすっとナナの持ち込んだバットを勧める。
「もう少しかかりそうだな」
なお砂コカトリスたちは別の広間でお昼寝をしている。おやつを食べて優雅にお休み中なのだ。
「ぴよ。あっちに……サボテンがあるぴよ」
「わふー。サボテンをカットしてるんだぞ」
「ウゴ、他にそんなことをしてる人、いないね」
ほう、何の研究だろうか。
……ステラはまだ時間がかかりそうだしな。
「面白そうだな。ちょっと見てみるか」
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