660.村では
その頃――ヒールベリーの村。
小雨の降る中を大きな葉の傘を差しながら、ナールが歩いていた。
「にゃんにゃーん」
「はふ……雨ですねぇ。ちょっとだけお家の中にいたい気分です……」
ナールの隣を少し眠そうなアナリアがついていっている。アナリアも葉っぱ製の傘を差していた。
雨模様ではあるが、ふたりして午後のお散歩なのだ。
「だめにゃ……! ウォーキングにゃ」
「わかってますよぅ。イスカミナにも言われましたしね、少し……増えたって?」
「ストレートにゃ。そういうイスカミナは増えてないのにゃ?」
「彼女はトロッコでも力仕事してましたから」
「そうにゃ。あちしたちより運動してるにゃ」
そう、ふたりは運動のために村を歩いていた。
さすがに雨の日は村を行き交う人は少ない。
「野ボールも雨の日には無理ですからね」
「そうにゃ。最近、あちしも広場でバット振ってるのにゃ……今日はお散歩で代替にゃ」
「薬師もボール投げとかよくしてますからね……」
晴れた日には運動不足気味のニャフ族や薬師が良く野ボールをしている。
冒険者たちはちょっと違い、日頃の運動はしているので真剣に野ボールをやっている人も多い。
真剣――ステラの投げたボールを打ったり、ステラに打たれない投球を模索することだ。
冒険者でもセンスある人は、かなりの腕前になっていた。
「にゃ? コカトリスが木陰でお昼寝してるにゃ」
「雨の中でですか……?」
ナールが顔を向けたほうにアナリアも視線を向ける。そこではコカトリスが大樹に寄りかかりながらすやすやとお昼寝をしていた。
羽のそばにはバットとボールが置いてある。
「すやー……ぴよぅー……。すやぁ……ぴよよー……」
「……野ボールを楽しみにしているみたいですね」
「にゃ、そんな感じだにゃ……。にゃっ、あっちで雲が切れてるにゃ」
東の空から薄く光が差し込む。
雨も少し弱まった気がした。
「これから晴れそうですかね」
「にゃ……。こちらも晴れたら軽く野ボールするにゃ?」
「いいですね」
アナリアとナールは頷きあう。
こうして村は平和に日々が進んでいくのであった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます