643.ぴよ連打

 俺は祭壇の隣に植物魔法で、ツタの台を生み出した。ディアとマルコシアスの座る用の台だな。


「ぴよ! 高さばっちりぴよね!」

「わふわふ。安定感抜群だぞ」


 祭壇にはごちゃごちゃたくさんのボタンがある。


「壁画で見るのとは大違いだな……」


 壁画は簡素なマニュアルで、そんなに大変な操作が必要なモノには見えなかった。


 しかし現物は遥かに厄介そうだ。ボタンは数十個にも及んでいる。


「操作はわかるんだぞ?」

「壁画を見た限りでは……この端から順番にボタンを連打する感じだな」

「ぴよよ! 皆で押してくぴよねー!」


 構造的には恐らく、魔力の流れをうんぬんかんぬんなんだろうな。ボタンで切り替えをしてるのだろう。

 今はここまでローテクな魔法具はない。


「もしかしたら壊れている可能性もある。うまく押せなかったり、何か気づいたら言ってくれ」

「らじゃーなんだぞ!」


 そんなわけで祭壇に向かい合い、ボタンを連打――いや、さすがに羽が邪魔だな。


 着ぐるみの羽をきゅっぽんと取る。


「ぴよっ!?」(ふぁっ!?)

「…………」


 砂コカトリスがぎょっとする。すぐに表情は元に戻るけど。


「ぴよよ」(そう、この人は着ているだけ……なぜか仲間っぽい服を……。おかしくない、おかしくない)

「ぴよ。なんだか頭を振ってるぴよね」

「バグってるんだぞ、きっと」

「バグってるって……どういう意味ぴよ?」

「混乱の地獄的言い方なんだぞ。流行ってたんだぞ」

「なるぴよ。学んだぴよよ!」


 たまにマルコシアスはそういう言い回しをするよな。しかし的確ではある。


 羽はつけたままにするか……。

 きゅっぽんと元に戻す。


 それから四方に並んだ俺たちは祭壇のボタンを連打することにした。


「ぴよぴよぴよー! あたしの連打を見るぴよー!」

「わふふふ! 我も押しまくるんだぞー!」

「ぴよぴよぴよー!」(ぽちぽちぽちー!)


 ぴよぽちぴよぽちぴよぽちぽちー!


 ま、まぁ……雑な感じだが、こうするしかないな。


「うむ……?」


 ボタンを連打していくと、魔力の流れに少し変化が出てきた。


「どるどるぅーがどるるぅーになってきたぴよね!」


 言葉にするとそれくらいだが。

 やはりボタン連打は魔力に影響を与えている。


 うむ……しばらくはこれを操作し続けるしかないか。

 ステラのほうは大丈夫だよな……?

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