641.祭壇の前

 俺たちは地下道を進んでいた。

 なめらかな木の幹なので、歩きにくさはないな。


「塔の真下か……?」


【月見の苔】を発動させると、光の苔が生まれて道の奥まで見える。


 どうやら砂で埋まったのは道の一部のようだな。

 奥のほうは普通に道が続いてそうな感じだ。

 それでも怖いので木で補強しながら進んでいくが。


(・Θ・ っ )つ三 ぎゅむぎゅむ


 砂コカトリスはややつっかえているが……大丈夫かな?


「ぴよぴよー」(れっつごーれっつごー)

「ぴよ! 楽しそうぴよね」

「わふふ。狭さは感じてなさそうなんだぞ」

「そうだな、砂コカトリスは狭いところがいいのかも……。ところで方向はこのまままっすぐで大丈夫かな?」


 俺の胸元のディアとぎゅむってる砂コカトリスに聞いてみる。俺の魔力感覚的にはこのまま、まっすぐなのだが。


「ぴよ! あたしの感覚的にもそーぴよ! きみはどーぴよ?」

「ぴよぴ」(たぶん塔の下かなぁ)

「塔の下があやしーぴよね!」


 そんなわけで地下を進んでいく。

 上のほうでは……ステラたちがまさに、戦っているだろう。こちらものんびりはできない。


 数十メートル進むと、光の苔の生え方に変化が出た。光の苔は壁にそって生まれるからな。

 つまり壁が湾曲して空間ができているということだ。


「広い場所に出るんだぞ?」

「ああ、そうだな……。魔力の流れも強い」


 俺は慎重に広間へと足を踏み入れる。


 そこはきらびやかな石造りの部屋だった。壁には赤や青、色彩豊かな絵が描かれている。


「砂漠に散乱していた壁画に似ているな」

「ぴよ。砂ぴよちゃんに案内されてたやつぴよ……?」

「そうだ、祭壇もあるな」


 部屋の中央には壁画に描かれていた祭壇がある。


「魔力が渦巻いているな……」


 首の後ろがざわざわして仕方ない。目の前の祭壇から魔力の流れを感じる。


「ぴよよ。この祭壇が原因ぴよ……?」

「わふ。それならどうするんだぞ。壊しちゃうんだぞ?」

「許可は貰ってるから、それも可能だ」


 出発する前、俺たちは遺跡の調査と原因があれば破壊する許可を得ている。

 砂嵐にはそれだけ困っているというわけだ。


 俺は一歩踏み出し――ふと思った。


「しかし何か妙だな……?」


 この祭壇が砂嵐の原因。

 わかりやすくあり得そうな話だ。


 奇妙な魔法具や厄介な遺跡は存在する。


 しかし、なぜそんな魔法具を作ったのだろうか。

 どういう意味があるんだろう。


「何か見落としがあるのかもしれない……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る