618.ひと段落をして

「穴が塞がりました! 一気に決めます!」


 ステラが砂の精霊をふっ飛ばしながら、バットを振り上げる。彼女の気勢に兵士たちも盛り上がっていた。


「うぉぉーー!」

「突撃ー!」


 ウッドも果敢に前へ出る。


「ウゴー! それー!」


 砂の精霊の攻撃は主に体当たりだ。あとはツブテをぶつけてくることか。

 どちらもウッドの身体には小雨のようなものだ。意に介さずシードバレットを撃つ。近づいてきた精霊はそのまま腕の薙ぎ払いで撃破する。


「もうちょっと持ちそう?」


 ぱむっ! ぱむむ!


 ナナは百発百中で砂の精霊を撃ち抜いていた。

 隠された特技だな……。


「魔力は大丈夫だ。だが、俺はここから動けないな」


 土のないところで植物を生み出すことはできるが、俺は集中しないといけない。

 集中が途切れると魔法は解除されてしまうのだ。


 とはいえ、蔦の覆いで新しい砂の精霊は入ってきていない。


「レンガはもっとないか? 足りないぞ」


 ヴィクター兄さんは風でレンガをえっさほっさ運んでいる。ついでに手をかざして砂の精霊を倒したり……やはり器用だな。


「ありったけ持ってくるように伝える!」


 カカがぽよぽよと後方へダッシュして行った。


 その間にも砂の精霊を次々と排除していき――5分後くらいには全て倒し終わった。


「あ、あれだけ居た精霊を……!」

「動きが見えなかった……」


 レンガを積んでいく兵士たちが、口々に驚いている。


「「あのコカ博士が連れてきただけはある!」」

「ふっ……」


 ぴこぴこぴこ。

 ヴィクター兄さんが羽を動かしてアピールしながら、俺の隣に来る。


「あとで参戦費用をちゃんと渡すからな。アッピールしておかないと」

「意外としっかりとしているな……」

「ぴよウォッチはお金がかかるんだ」

「なるほど……」


 蔦の覆いにもガンガン砂の精霊がぶつかる音が聞こえるが、突破はされていないようだな。


 さらに数分後、カカがレンガの輸送隊を連れてきた。これでここは一安心だな。


「……よし、次に行くか」

「はい……!」


 ステラはバットについた砂を落としている。

 汗一つ、かいていないな。

 俺も魔力はまだまだ余裕がある。


 しかし雷の落ちる音はしなくなったが、砂嵐は止みそうにない。

 いったいどれだけ戦えばいいのだろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る