564.アイスドラゴンの牙、実食
冒険者ギルドのレストラン。
削った氷に目を丸くする特使に、俺が説明する。
「これはこうした料理なんだ。この上にシロップや果物を乗せて食べる」
「ほ、ほう……?」
どうやらあまり想像が出来ないようだな。
無理もないが。
氷は魔法具で生むしかなく高価だ。なので、この辺りでは氷を食べる習慣がない。
ステラが赤いシロップに視線を向ける。
「食べやすいのは蜂蜜イチゴのシロップですかね」
「では、それで……」
「はいですニャーン」
ニャフ族の料理人がきゅむっとマンゴーやイチゴ、メロンを乗せていく。
そしてそこに薄めの蜂蜜イチゴのシロップをとろーりとかけた。
「なるほど、このような……」
赤いシロップで氷はまったり輝いている。
「見たことのない料理ですな。果物もふんだんに使われていて、おいしそうでございます」
ニャフ族の料理人は俺たち全員に同様のアイスドラゴンの牙を用意していく。
立食パーティーでは専門の料理人が、オーダーメイドで作ってもいいかもな。
全員分が揃ったところで、
「「「恵みに感謝を!」」」
アイスドラゴンの牙を食べ始める。
ふむ……濃厚な甘味と酸味をさっぱりした氷で口の中に放り込む。
ちなみに氷もちゃんとふわふわ度を高めていた。
専用の削り機を作ってみたが、良さそうだな。
まぁ、薄く削るようにしただけだが。
特使もすっと一口、シロップと果物と氷を口に含む。
「なるほど! これは……ひんやりしておいしいですな!」
「そうか、良かった」
「いやいや、本当ですぞ。半分ほどは氷ですが、これが中々どうして……」
そんな風に話が進む。
「氷も単に削ったわけではありませんな。ふわっとしております」
「そうです、今回の氷はぴよちゃんが削ってくれました……!」
「ぴよぴ!」(いえーい!)
アルバイトぴよが奥で羽をぴっと上げる。
「ぴよよ!」(丹精込めて削りました!)
「なるほど……ところでアルバイトコカトリスの前に同じようなアイスドラゴンの牙があるような」
「あれはアルバイト料です……!」
どんとアルバイトぴよの前にもアイスドラゴンの牙がボウルで置いてある。
「ぴよー!」(いただきまーふ!)
ボウルを両方の羽で持ち、豪快に口の中へと放り込む。
ざぁーー。
ざりざり、もしゃもしゃ……。
「「…………」」
「ぴよー!」(けぷー!)
コカトリスが満足そうだ。
一気に食べきったな。
「ぴよ」(アイスドラゴンの牙はだいたい氷だから、実質ノンカロリー。ダイエットにはほぼ無関係なのだ)
ぽよぽよとアルバイトコカトリスはレストランから去っていく。
「ぴよ!」(お腹いっぱいになったから、お昼寝してくる!)
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