563.トロッコの移動

 エルト達が食事へ出かけた後、いよいよ魔導トロッコが地下へ移動になる。

 イスカミナがご機嫌に鼻唄を歌いながら、解体していった。


「もっもっもっもっもぐー」

「はわー。どんどんバラバラになっていきますねー」


 テテトカが草だんごを食べながら、感心する。


「せっかく組み立てたのにいいんですかー?」

「大丈夫もぐ! 元々、魔導トロッコは解体と組み立てがセットもぐ!」


 イスカミナがスパナをくるくるっと器用に回す。


「鉱脈も行き止まりだったり、もう鉱石がないこともあるもぐからねー」

「あー……ずっと同じ方向に進むわけじゃないんですねー」


 テテトカはふむふむと納得した。


 農業も同じ場所で同じようにやり続けると収穫量が落ちることがある。

 ヒールベリーなんかはその典型で、少しずつ植える場所を変えないといけない。

 当然、それを織り込んだ農具や収穫の配置が必要になる。


「ぴよー?」(これは運んでも大丈夫ー?)


 コカトリスがバラバラにされた魔導トロッコをペチペチする。


「もう運んでもいいかだってー」

「そっちにあるのは大丈夫もぐ!」


 ぴよ機関車もぴよシートも解体され、シートの上に置かれていく。


「大丈夫だってー」

「ぴよよ!」(よし、運ぶぞー!)

「「ぴよー!」」(はーい!)


 ぴっぴよ、ぴっぴよ。


 コカトリスがせっせとバラバラにされたパーツを運び始める。

 人間の大人だと数人必要な重さのパーツも、コカトリスなら片羽で担いでいけるのだ。


「ぴよ……」(ふかふか……)

「むっ!」


 コカトリスがシートの手触りに気を取られている。

 危ない。コカトリスは働き者でパワフルだが、そのやる気がいつまで続くのかは未知の部分がある。


 テテトカがすすっと気を取られたコカトリスの進路に移動する。


「ぴよちゃん、ここに草だんごがありますよー」

「ぴよ!」(ダイエットの毒ですよ!)

「そしたら半分だけでもー」

「ぴよよ!」(なんと! それなら、まぁ……食べるのもやぶさかじゃないかもしれない……。はっ! これを運ばないと!)


 テテトカの誘導でコカトリスは誘惑を振るい払った。


「……大変もぐね」


 しかしコカトリスのパワーが凄いのは事実だ。

 たまに作業が止まるが、そのたびにテテトカがうまくコカトリスを正気に戻していく。


 もちろんコカトリスや自分も草だんごをもぐもぐしながら。


「ぴよぴよ」(おやつおやつ)

「まだまだありますよー」


 特使とエルトが食事に行っている間に、ぴよトロッコの移動はちゃんと終わったのであった。

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