544.シートを取り付けよう!

 座席シートの試作は順調なようだ。


 俺とステラはイスカミナの工房に来ていた。


「特にニャフ族の方々から大好評です!」

「ふかふかだしな……」


 ニャフ族はウッドのマルデコットンも大好きだ。

 猫だけにふわもっこに目がないのかも。


「あとは……実際に魔導トロッコに取り付けてどうかですね」

「もぐ! ここに本物の座席がありますもぐ!」


 俺達の前には、どどーんと座席部分が置いてある。

 機械仕掛けで装飾は何もないので、それらしき部分というだけだが……。


「では、装着です!」


 ステラが持ってきたぴよシートを、丁寧に掲げて機械部分に合わせていく。


 もぞもぞ、ごそごそ。


「すぽっ……と!」


 少しの作業でぴよシートの取り付けは完了した。


 つぶらな瞳のコカトリスが鎮座している……。


「ふむ、ふむ……」


 ステラがぽんぽんと取り付け具合を確かめる。


「大丈夫だと思いますが……エルト様、座ってくださいますか?」

「ああ、構わないぞ」


 よいしょっとぴよシートに腰掛ける。


 ……ふかふか。


「家で座っているのとだいたい同じだな。やや背中側が硬いかもだが」

「もぐ。背もたれの芯がちょっと座り心地を変えてるもぐね」

「シートのほうも改良・調整はまだまだできますよ!」

「もぐ! 背もたれもちょっといじるもぐー!」


 こうしてぴよシートの調整は続いた。


 俺は持ってきた書類仕事をここでやるか……。


 ◇


 ドカドカカ……!

 ぎゅいーん、ぎゅいーん。

 もっふもふ……。


 数時間後。


「ふぅ、どうでしょう?」

「もっぐもぐ。悪くなさそうもぐね」


 一段落したのだろうか、イスカミナが座席シートをぽんぽんする。


「もぐ。座席はちょっと傾くもぐ」


 うぃーん。


 座席の横のスイッチを押すと、シートがちょっと倒れる。


「これはいいな、楽そうだ」

「もぐ。この魔導トロッコは基本地下を走るもぐ。風景的なところは……好みもぐ」


 そうだな、光る苔は綺麗だが。それ以外は割と見どころがない。


「トールマン用はこれでオッケーですかね? あとは小さめの方々と大きめの方々ようでしょうか」

「小さめはそんなでもないもぐ。問題は大きいほうもぐね」


 だろうな。

 2メートル級の種族はちらほらいるが、どこも座席には苦労している。


 レストランでも専用の椅子でないといけないし。

 コカトリスも成長すると、それくらいにはなるようだしな……。


 窓から外を見ると、すでに夕日が落ちかけていた。


「その辺りの調整はまた明日にしようか」


 とりあえず大方の座席シートは完成したわけだ。


 実にぴよっとしているが、良しとしよう。

 これはこれで大いにアリだろうし。

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