530.鍛冶ギルド、きたる

 それから数日。

 何事もなく春は過ぎていく。

 やはりここら辺りは暖かいな。暦の上ではまだ春だが、日本で言えば初夏くらいの気温である。


 今日は午後から家で少し待機中だ。

 村のカレンダーでは休みだが、これからひと仕事ある。


 これからザンザスより、鍛冶ギルドの面々がやって来るのだ。


 一応、対外的にはザンザスの鍛冶ギルドを自宅に招くという形になっている。


「うーん……むにゃむにゃ、だぞ」

「ぴよー。マルちゃーん……ぴよー」


 ディアを抱きながら子犬姿のマルコシアスが半分寝ている。


「ひんやりだぞー……むにゃむにゃ……」

「夏はひんやりぴよよー……」


 ステラもユニフォーム姿だな。

 今は砂ぴよの予習のために本を読んでいる。

 ウッドはララトマのところだな。生産エリアの打ち合わせがあるらしい。


 ドリアードは何気に休日という概念が薄い。

 ほぼ変わらないサイクルを毎日繰り返している。

 まぁ、平日でも土風呂に数時間いたり、好きに草だんごこねたりしているが……。


「暑くなるとぴよちゃん達はひんやりしますからね」

「そのようだな……」


 起こさないように近付いて、ディアにそっと触れる。ふにっとね。


「ぴよー……」


 確かにひんやりしている。

 これはコカトリスの環境適応のひとつだ。

 俺は二人にコカトリス刺繍タオルをそっと被せ、その場を離れた。


「ふむふむ……。やはり砂ぴよちゃんはかなりのレアみたいですね。わたしの推測は間違っていなかった……!」


 俺はちらりと時計を見る。

 今、時刻は午後1時だ。


 時間的には午後の早めにくることになっているが……そろそろかな。

 ザンザスとの間なら、数時間の誤差が出ることはまずない。


 コンコン。


 おっ、来客か。


「……来ましたかね」

「来たと思うが」


 他に来客の予定はないからな。

 鍛冶ギルドの面々だろう。


「まぁ、大丈夫だよ……。不可抗力なわけだし」

「……それはそうなのですが、その当時はそういうわけにも……」


 この辺り、ステラは結構よわよわである。

 魔物やダンジョンには我先に突撃していくんだが。


「俺もいるし、うん」

「わかりました……。申し訳ありませんが、エルト様を盾にいたします……!」


 俺は盾になり、扉を開ける。


 ……そこには5人組が、キレイに土下座していた。


 先頭には白ウサギの獣人がいる。

 この人が代表のカミーユのはずだが。


 えーと……?


「「「大変……っ! 申し訳ありませんでした!!」」」


 開幕、速攻で謝られた。

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