519.ロウリュのそばで

 第2大樹の塔の前。


 俺はそこで土風呂とロウリュの建設指揮を取っていた。


 そこへウッドが大きな板を担いでくる。


「ウゴ! この板は?」

「そのサイズは……土風呂の低階層用だな。『3』の看板のところに移動させてくれ」

「ウゴ、わかった!」


 のっしのっし。

 パワフルなウッドは本当に頼りになる。


 ディアと子犬姿のマルコシアスは、俺の胸元で作業を見守っていた。


「ぴよ。そろそろ、かあさま出てくるぴよ?」

「むしろジェシカぴよのほうが先に音を上げそうなんだぞ」

「まぁ……冒険者なら引き際を心得ているだろう」


 サウナに必要なのは引き際である。

 ジェシカなら杖の先から水も出せるし……。


 そんな話をしているうちに、塔から3体のコカトリスが出てきた。ロウリュの試運転に付き合ってくれたぴよ達だな。


「ん? どうしたんだ……?」


 3体が並んでいるように見えたが、違うな。

 真ん中のコカトリスは歩いていない。羽を貸して両脇の2体に運んでもらっている。


「ぴよ……! 完全に、アレぴよね!」

「アレ? 無事なのか?」


 コカトリスは暑さにも強いはずだが。

 まさかダウンしたのか……!?


 焦っていると、真ん中のコカトリスから――。


「ぐー……!」


 大きないびきが聞こえてきた。


「……寝てるんだぞ?」

「寝ている……でいいのか?」

「すやぁしてるぴよね!」


 とりあえず近寄ってみる。


「大丈夫なのか?」

「ぴよ、聞いてみるぴよ!」


 ディアがぴよぴよと会話してくれる。


「ぴよぴよ」(すみません、この子は完全に寝落ちました)

「ぴよっぴ……」(ぽかぽか良すぎて、夢の世界へ……)

「ぴよよ!」(責任持って、持って帰りますので!)

「ぴよっぴよ!」(ぼくたちも夢の世界へ行ってきます!)


 お、おう……。


 ぴよぴよぴよと3体のコカトリスは立ち去っていった。

 ……どうやら大丈夫なようだ。


 続いてステラとジェシカが出てくる。

 ロウリュに入る前と同じ服装だが、ふたりともほくほくしているな。


「ふぅ、気持ち良かったです……!」

「良かったですわね……!」


 ジェシカがライオンの杖からコップへ水を出し、一気飲みする。


「ぷはー……ですわ!」

「この水、おいしいですよね。わたしにも追加で一杯いいですか?」

「どうぞですわ!」


 ステラがマイコップを差し出し、杖から注がれた水を一気飲みする。


 ごっくごく……。


 お風呂上がりにコーヒー牛乳を飲むとか、そんな感じだな……。

 でもサウナで水分補給は大事だ。


「ぴよ! ロウリュもよさそうぴよね……!」

「ええ、建設が一段落したら入ってみては?」

「短時間なら我もイケるんだぞ」

「そうだな……。先に入りたい人優先で、やってみるか」


 それから夕方になって、土風呂マニアの人達が第2大樹の塔へと列を作っていた。


 まだ村の外から人を呼べる内装にはなっていないが……とりあえず完成だな。


「あれ? そういえばレイアは?」

「ふむ……工事の監督があるから、今は遠慮しておくそうだ」

「仕事熱心ですね、さすがレイアです」


 うんうんとステラが頷く。


 ……コカトリス達がロウリュに入っていたのを見たレイアが激しく動揺していたことは、俺の胸の中にしまっておこう。

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