513.ロウリュの試運転

 それからまた1週間。


 いよいよロウリュの資材が形になり、テストできるようになった。

 土風呂用の大きな滑車と滑り台も来たな。


 広場にてお披露目である。大勢が集まってきてくれた。


 ナールとステラはロウリュのサウナストーンと板状の高温魔法具を見ている。

 ちゃんとテスト用の水とアロマオイルもあるな。


「どうですにゃ?」

「おー……そうです! こんな感じですね!」

「俺の知識的にも合っているな、さすがだ」

「光栄ですにゃ!」


 サウナストーンはロウリュの心臓部。円筒形のカゴであり、ここに大きな石を敷き詰める。

 この下に板状の高温魔法具をセットして、熱するというわけだ。


 熱した石に水やアロマオイルをかけることで、蒸気を発生させるわけだな。


 コカトリス達も興味を引かれたのか、何体か広場にいる。


「ぴよぴ」(ほほう、これが新しいリラックスアイテムですか……)

「ぴよぴよ……!」(期待が高まる……!)


 ……地球では薪のストーブで熱していた気がするが、まぁいいか。

 この世界のロウリュはこういう形がスタンダードということだし……。


「もう使えるのか?」

「にゃ! 大丈夫ですにゃ。野外にゃけど、やってみますかにゃ?」

「ぜひ、やってみてくれ」

「楽しみです!」


 ディアと子犬姿のマルコシアスもわくわくと見上げている。


「雰囲気あるぴよ……! あそこの上から水をかけるぴよよね?」

「そうだぞ。ジュワーって蒸気が出るんだぞ」

「ほっかほかぴよねー」

「ほっかほかになるんだぞー」


 他の住人達もそわそわと気になっているようだな。

 アラサー冒険者はあごに手を当てて、深く考え込んでいる。


「噂では聞いたことありやしたが、あれが……」

「本当か、使い心地はどうなんだろうな?」


 アラサー冒険者の隣にいる、初老の冒険者がたずねていた。


「とにかく、新陳代謝が良くなるとか……」

「風呂みたいなものか?」

「香りも捨てがたいとか……」

「そりゃ楽しみだな」


 一回は野外でテストすべきだと思っていたので、ちょうどよい。


「にゃにゃにゃーん。それじゃ、スイッチオン! にゃー!」


 ナールが気合を入れて魔法具のスイッチをオンにする。


 ゴオオオォ……!!


 何かが燃えるような音が鳴り響く。


「おっ、風が吹くと熱気を感じるな」


 少しの風でも熱が巻き上がる。

 すぐに熱くなるようだな。


「にゃー……順調ですにゃ!」


 魔法具の動力は砕かれた魔石だ。

 煙も出さないし、エコな気がする。


「あったかぴよー」

「ほかほか気分がアップして来るんだぞ」

「ああ、懐かしいですね……! こんな風でした!」


 ステラも目を輝かせている。


 ニャフ族が今度はアロマオイルを用意していた。

 木の桶にとぷとぷと液体を注ぎ込んでいる。


 このアロマオイルは、俺の魔法から生み出した植物が元になっている。

 調合してくれたのはアナリアだが。

 季節や地域性を超越した、夢のアロマオイル……のはずだ。


「さて――そうしたら、ステラがアロマオイルをかけてみるか?」

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