483.『大海の巨鯉を打倒せし者』『幾千を統べし星を狩りし者』

 ナール、アナリアと別れた俺は家へと戻った。


「ただいま……ほわほわしているな」

「おかえりなさい……! ええ、ちょっとぴよ達をふもっとして来まして」


 今もステラはディアとマルちゃんを膝に乗せて撫でている。


 とはいえ、疲れたのかディアもマルちゃんもすやすやしているな。


「海ぴよちゃんも馴染めそうです。ぴよちゃん達はお互いに撫で合ってました」

「それならいいんだが……ウッドは大樹の塔か」

「ララトマを送りにいってます」

「彼女にとっても、良い旅になったかな?」

「きっとそうだと思いますよ……!」


 着ぐるみを脱いで、俺はステラの隣へ座る。

 マジカルな仕組みにより、匂いとかもこもらない……まぁ、あとでお風呂入るが。


 ふたりきりになったので、確認したいことがある。


「ところで――海での戦いで称号は手に入れたか?」

「はい……鯉と星について、ですね。何なのでしょう……これは?」

「うーん……わからん……」


 本当にわからん。

 だけど多分、前世にまつわるモノで間違いはない。


 まぁ、気長にやっていくしかないか……。


「『大海の巨鯉を打倒せし者』『幾千を統べし星を狩りし者』ですね」

「格好いいは格好いいな。そういえば、ヴィクター兄さんは?」

「村の宿屋に行きました。帰るのは明日にするそうで」

「そうか……まぁ、身分を隠しながらだからな」


 ふぅ。

 一息つくと、どっと疲れがやってきた。


 こてんとステラの隣で横になる。


「ぴよ……」


 ディアがもぞもぞして、俺の胸元に転がり込んでくる。


「……かわいいな。少し大きくなったかな?」

「ちょっとずつですが、大きくなってますね。港では大はしゃぎでしたし」

「そうだな……。また行きたいな」

「ええ、また行きましょう……!」


 ◇


 翌日。

 ヴィクター兄さんは挨拶もそこそこに帰るらしい。


 村の入口で彼を見送る。

 当然、ヴィクター兄さんは着ぐるみ姿だった。


「仕事があるのでな。帰る」

「気を付けて。また来てくれ」

「もちろん。コカトリスをもっふ――いや、研究したいからな」


 本音が漏れてる。


「あとはマルデアコヤ貝もあるが……時間がない。ナナとジェシカにちょっと話はしたがね」

「ナナに持たせたままだったな、そう言えば……」


 マルデアコヤ貝は箱につめて持ってきた。

 まぁ、移動は一日くらいだし無事なようだが……。


「生簀もあるが、そろそろ手狭だな。海コカトリスも増えたし……」


 俺の言葉にヴィクター兄さんが羽をぴこぴこさせる。


「考えはあるのか?」


 構想程度だが、ある。

 昨日ナールからも少し話があったが。


「ため池を作ろうと思うんだ。どのみち、人口が増えたら必要だからな」

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