484.早急に掘ります!

「それはいい案だ。頑張れよ」


 ぴこぴこ。

 どこまでもキャラを忘れない。


「兄さんこそ」


 周囲には誰もいないし、このくらいいいだろう。

 色々と世話になったし。


「……ありがとう。じゃあな、また」


 ふわわーっとヴィクター兄さんが浮かび、そのまま空の彼方へ飛んでいく。


 ヴィクター兄さんと別れ、俺は次の仕事に取り掛かる。

 ため池作り――本格的な水道事業だ。


 場所はすでに見繕っている。

 大樹の塔の裏側、まだ農地にしていない所だ。


 春先の陽気を感じながら、そこまで歩いていく。

 そこにはすでにアナリアとイスカミナ、ステラがいた。


「悪い、待たせた」

「いえいえ、私達も今来たところですし……」

「そうですもぐ!」

「なら良かった」


 俺は予定地を見渡す。

 まばらに草が生え、見るからに石や砂がある。


「やはり水は大切だからな。今の計算だと――住人が倍の500人くらいで限界が来るとか」


 ナールから受け取ったメモを読むと、アナリアが頷く。


「農業、ポーション作り、養殖と水をものすごく使ってますからね。湖からの水道管を大規模化する手もありますが……」

「水道管の大規模化とため池――どちらもやれば、さらに村が発展しても大丈夫もぐ!」


 イスカミナが胸を張る。

 ちなみにステラはすでにスコップを持っている。


「土を掘るのはお任せください……!」

「すでにやる気だな……」

「ため池にぴよちゃんを浮かべると聞きましたので! 最速で掘ります!」


 しゅっしゅっ。

 スコップを素振りするステラ。


「海コカトリスには、水があったほうがいいと思うしな……」

「全くです! そのためにも――掘りますね!」


 ステラは完全に掘りモードに入っていた。


「この辺りから、ここまでを……掘ってほしいもぐ! 地下から水を引っ張るもぐ!」


 イスカミナがささっと杭を打っていく。


「わかりました! では、掘ります!」

「はーいもぐ!」


 そうして、あっという間に掘削が始まった。

 そう、それはまさに掘削――少しの手加減もない、本気ステラはどんどん掘っていく。


「……すごいやる気ですね」

「ふむ、実は冒険者を呼んでいたのだが……」


 集合時間前にステラはギアが入っていた。


「ま、まぁ……石や土の運び出しがありますからね」

「そうだな……」


 それから予定時間に冒険者が集合した。


 もう地面には大きな穴が開いている。

 俺も大樹の腕で掘ってはいるが……ステラのスピードは段違いだな。


 スコップやクワを持った冒険者達が驚いている。

 そりゃ驚くよな。


 開始時間より前に大穴が出来ているんだもの……。


「マジですか!? もうこんなに掘ったんですか!?」

「すごい……!!」


 予定では数日かかるはずだったのだが……なんと一日で穴は掘り終えてしまったのだった。

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