480.ぴよ会談終了

「……冒険者? ザンザスに? いや、だけど俺の母親は――」


 王家の人間、と聞いていた。

 王位継承には絡まない程度、らしいが。


「王女なのは合っている。つまり魔法でよく抜け出していたわけだ。一人でな」

「そんな、無茶苦茶な」

「不可能ではない。瞬間移動の魔法があれば、な。あとは……そう、幻視の魔法でアリバイ作りもしていたらしい」

「……信じられないな」


 瞬間移動の魔法も幻視の魔法も存在はする。

 だけど両方とも魔法適性がなければ使えない、上級の魔法だったはずだ。


 ヴィクターがひらひらと羽を動かす。


「その他にもいくつか便利な魔法適性があったらしい。適性の調べ方は覚えているか?」

「鑑定の魔法具に手を当てて、魔力を放出する」


 かなり大掛かりな……オルガンピアノみたいな魔法具に手を当てた記憶がある。


「複数の魔法適性を持つ場合、うまく検出されないこともあるそうだ。だから周囲も見逃したわけだな……。本人もうまく隠していたらしい」

「はー、凄いなぁ……」


 素が出てしまった。

 それで俺の父親と出会ったのか……。


「しかし名前は俺も知らん。髪は金髪で、いかにも冒険者の風体だったが」

「……というか、なぜザンザスなんだ?」

「自治都市だから、貴族の目は届かない。しかも色々な人間が出入りする。紛れるのには好都合だろう。俺は――」


 ヴィクターは羽をパタパタさせた。


「生コカトリスを見に行きたくて、こっそり遊びに行っただけだ」


 ◇


 それから少しして、ヴィクターとの話し合いは終わった。


「改めて念を押すが、迂闊な他言は無用だ。調べたい気持ちはわかるが慎重にな」


 最後にヴィクターからそう言われて解散になった。


 ……なんというか、結局色々と話をした気がする。

 ヴィクターも甘いな……うん。


 宿舎の部屋に戻ると、レイアが海ぴよ達と遊んでいた。ステラも一緒だな。


 レイアが腹這いになっている海ぴよを色々とさわさわしている。ステラはほわほわ……何かあったのだろうか?


「なるほど……脚がちょっとがっしりしてますね」

「わかりますか……!?」

「ええ、やはり泳いだりするのに鍛えられるのでしょう……! ああっ! 新しいぴよグッズのアイデアが……!!」

「降りてきますか!」

「降りてきそうです!」


 ふむ……楽しそうだな。


「ぴよ! お話は終わったぴよ?」


 ディアがててーっと俺の足元に走ってくる。

 かわいい。


 俺はディアを抱き上げる。


「ああ、終わったよ」

「どんなお話をしてたのぴよ?」


 ディアが好奇心をあらわに聞いてくる。

 まぁ、気になるよな。


 俺はそっと答えた。


「自分のぬいぐるみを作って売りたいんだとさ」


 ディアは首を傾げる。

 どうやらあまり理解できなかったらしい。


「……ちょっと変わってるぴよね」


 俺は静かに答える。


「そう――ちょっと変わっているんだよ」

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