475.問題はありません

「……それはまた、どういう理由なんだ? 聞いてもらっていいか?」


 とはいえ理由はある程度、推測できた。

 ヒールベリーの村のコカトリスが色々と村の生活の利点を言ったのだろう。

 見た目もたぷついてるしな……。


 以下、海コカトリスのリーダーとのやり取りである。


「ぴよ」(そちらにはご飯がたくさんあると聞いて)

「ふむ……たくさんあるな」


 よそに輸出できるほど、たくさんある。

 海コカトリスは飢えていたみたいだし、重要だろうな。


「ぴよ」(あとは、海にも飽きました。眺めも変わらないし……)

「そうか……」


 飽きたかー……。

 なるほど……。


「ぴよ」(それに海藻とかしょっぱいし……)

「……まぁ、そうだろうな」


 そんな話をしていると、ステラが俺の左隣にすっと立っていた。


「エルぴよちゃん……」


 よよよ、とステラは俺の着ぐるみの肩に手を置く。


 絶体絶命である。


 ステラがほんのうっかりフルパワーを発揮したら、俺の左肩は心臓ごと粉砕されるだろう。


 いや、絶対しないとわかっているが……。


「移住は構わないが、生態的にはどうなんだ? ルイーゼは……」


 振り向くと、ルイーゼがいる。

 珍しく浮かんでいない。


 ルイーゼは両肩をヴィクターぴよに押さえられ、こっちに歩いてきた。……あるいは歩かされてきた。


「と、特に問題はないんだぜ……」

「本当に?」


 俺の言葉に、ヴィクターがぐっと背伸びする。

 かわいい。


「植物魔法で海藻を生やすのは悪くない。だがいきなり増やすと、周辺の生態系にも悪影響があり得る。やはり時間をかけて復活させた方がよい……ということで、賛成だ」

「博士……!」


 ステラが感激していた。

 ルイーゼがふーっと息を吐く。


「まぁ……漁場の回復にはしばらく時間はかかるだろうさ。元々、そちらの海コカトリスはここからもっと離れた所にいたんだし。好きなようにすればいいさ」

「わかった、ありがとう」


 ヴィクターぴよがぱっとルイーゼの肩から手を離す。


 ちなみにヴィクターぴよはすでに別のことを考えているようだった。


「味覚、ちゃんとした味覚があるのか……? 考えたこともなかったが……」


 まぁ、村人が増えるのはいいことだ。

 ぴよだけど……。


 俺はぴこぴこと羽を動かす。


「改めて――ヒールベリーの村への移住を歓迎するよ」

「歓迎するぴよ!」

「ぴよよー!」


 ヤッター、とでも言うように海コカトリス達が羽をバタバタさせる。


 ……ふむ。

 思ってもみない展開になったな。


 それでも悪い気は全然しない。

 村はさらに賑やかになるだろうしな。

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