428.ステラ式海中戦闘
船乗り達がマスクを付け、装備の最終点検を行う。
特に解毒ポーションの携帯は重要だ。
水中で飲むことはできないが、万一の時は素早く浮上して解毒しないといけない。
「……何してるんだぞ?」
「ん?」
甲板のマルコシアスが首を傾げる。
彼女の視線の先を追うと、コカトリス達が甲板に並んでいる。
8体のコカトリスが一列に並び、その前に1体のコカトリスが立っている。
「ぴよっ!」(いきます!)
「「ぴよよー!」」(はーい!)
ぴよぴよ。
前に立ってるコカトリスが羽をバタつかせ……ダッシュした。
海に向かって。
「あっ……」
なにか言う間もなく、コカトリスはぴょーんとジャンプして、くるくるっと回転しながら海へと飛び込んだ。
どっぼーん。
華麗な飛び込みである。
「「ぴよぴよ!!」」(すっごーい!!)
……次に列から1体のコカトリスが前に出てくる。
「ぴよっぴ!」(いきまーす!)
どたどたどた……ぴょん、どっぼーん。
同じようにコカトリスが飛び込んでいく。
どうやらそういう、やり方らしい。
「問題はないようだな……」
「だぞ。楽しみながら海にダイブしてるんだぞ」
「……行ってくる」
もふっとハンドでマルコシアスを撫でる。
マルコシアスが気持ち良さそうに目を細めた。
「頑張ってなんだぞ……!」
◇
俺達は潜水部隊と海に潜り始めた。
まずは星クラゲを探り当てないといけないが――。
ちなみにジェシカの水中会話魔法で話はできる。
というより、この魔法は本当に便利だな……。
ライトをつけて少し潜ると、向こうの海域でキラキラっとした何かが漂っている。
「あの辺りか」
俺が羽で指し示すと、ステラが頷いた。
「ええ、一昨日とあまり変わらない……少し近いかもですが」
「リヴァイアサンは見当たらないですわ。近くにいるかと思いましたが……」
ジェシカの言う通り、またセットで出てくる可能性はあったが……とりあえずリヴァイアサンはいないようだな。
俺と同じくライトをぺかーとつけたナナが言う。
「タイミングで追いやられてるのかもね。そちらも気は抜かないようにしよう」
「同時に襲われるわけにはいかないからな」
潜水部隊がぶるっと震える。
脅してはいないが、忘れても問題だ。海の魔物は星クラゲだけではない。
「ぴよよ〜」(んじゃ、散開〜)
「「ぴよー!」」
コカトリスは広範囲に散りながら、星クラゲの群れを捕捉する。
伝令は船上のディアとマルコシアス(ディアと人間との通訳係)だ。
コカトリス→ディア→マルコシアスという順番で伝言をしていく形だな。
まぁ……レイアも海上にいるし、大丈夫だろう。
「では、まずわたしから……!!」
スチャっと2本のバットを構えたステラが前に出る。
さきほど星クラゲとエンカウントしたら、一番に戦いたいと申し出があったのだ。
「試してみたいことがあるとか……」
「ええ、初めてなのでアレですが……!」
ステラの声には気合がみなぎっている。コカトリスラブの血が燃えているのだ。
「……なにかまた、凄いことをやりそうな気がする」
ナナの言葉に、俺も固唾をのんで見守る。
「ナナもできるんじゃないかと思いますが……」
ステラは両腕に1本ずつバットを持ち、腕を広げた。
「……?!」
「えーい!!!」
そのまま、ステラは腕を広げて回転を始めた。
ぐるぐるぐるぐるー!
どんどん回転は早くなり……そのままステラは星クラゲの群れへと突っ込んでいく。
少し離れていると、ステラの行動の意味がよくわかる。
いや、やっていることがわかるだけだが……。
「渦になってる……!!」
そう、ステラが中心になって回ることで小さな渦巻が形成されているのだ。
信じられないが、そうなっている。
それをはっきりと認識した瞬間――ナナの叫びが聞こえた。
「できないよ!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます