415.ぴよの見分け

 テーブルの上に草だんごを並べていく。


 こねこね。


 かなりの人数で作っているので、どんどんと出来上がるな。


「そろそろコカトリスを呼んできても――」

「……もう後ろにいます」

「はやっ!」


 振り向くといつの間にか、コカトリス達が並んでいた。


「……ぴよよ」(……じゅるり)

「ぴよぴよ」(ステイステイ)

「ぴよぴよよ」(わかってる。じゅるり)


 コカトリスは小さくぴよぴよしながら、俺達とテーブルの上の草だんごを見つめている。


「も、もう食べても大丈夫だ……うん」


 圧を感じる。草だんごを求めるコカトリスの圧を……。


「ぴよ! これから草だんごを配っていくぴよ!」

「並んでなんだぞ」

「「ぴよー!」」


 並んだコカトリスにちょっとずつ草だんごを渡していく。


「ウゴ、はいどうぞ」

「ぴよー!」(やったー!)

「次のぴよ、どうぞなんだぞ」

「ぴよ!」(おいしそー!)

「ウゴ、よく噛んでね」

「ぴよぴよ」(もぐもぐ、ごっくん)


 渡された草だんごを食べたコカトリスは、また列の後ろに並ぶ。

 その間に俺達は草だんごをこねるのだ。

 ぐるぐるとコカトリスが一周していくわけだな。


 ……十数分後、どのコカトリスも満足したのか床に寝転がってお昼寝を始めた。


「ぴよちゃんは草だんご大好きですけど、本当にお腹いっぱいには食べないんですよね」

「そうなのか?」

「おやつ、という位置付けなんじゃないかと……」


 コカトリスの体の大きさを考えれば、確かに草だんごの量は多くない。


「ぴよ! 草だんごは『でざーと』ぴよ!」


 ララトマも少し休憩を取りながら、


「これだけしか食べないぴよちゃんはいませんです!」

「その辺りは一線を引いているわけだな」


 なるほど、まぁ……饅頭やチョコレートだけでお腹いっぱいには出来ないからな。


「ぴよ……」(満足……)

「……ぴよよ」(……ねむみ)


 コカトリスは気持ち良さそうにお昼寝モードに入っている。


「わたし達もご飯を食べたら、一休みしましょうか」

「そうだな。コカトリスのお昼がこれだと……夜はたくさん野菜や果物を食べそうだし」


 そうして軽食を食べて、俺達も一休みする。

 とりあえず分析結果等が出てこないと次の動きも決まらないしな。


「……ちょっと失礼」


 ステラがコカトリスの間にそろーっと忍び寄る。

 そして挟まれる形で寝転がった。

 なかなかのにこにこ顔である。


「楽しそうだな……」


 対して俺は、少し発見があった。


 実を言うとコカトリスの見分けはかなり難しい。

 大きなヒヨコで、ディア以外の大人コカトリスは凄く似ているのだ。


 しかし今、ヒールベリーのコカトリスと海コカトリスの見分けはつくようになった。


「……ヒールベリーのコカトリスはちょっとたぷってるんだぞ」

「そうだな……」


 並んで見るとよくわかる。

 お腹周りがふよんとたぷたぷしているのだ。


 海コカトリスが基準から痩せている可能性もあるが。食べ物が少ないと言っていたし。


 もちろん海コカトリスの食事も大事だが……。


「……ちゃんと痩せられるといいな」


 たぷは減らしていかないとな。

 俺は静かに頷くのであった。

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