365.宿舎にて

「ねむねむー、ぴよねー」


 昼過ぎのリビング。

 ディアがマルコシアスの横腹を枕にして、うとうとしていた。

 ちなみに肉球ももみもみしている。


「主のふかふかボディで、我もすやすや……だぞ」

「お互いにお得ぴよねー……」


 ふにふにと頬ずりするディア。

 それを気持ち良さそうに受け止めるマルコシアス。

 かわいい。


 ちなみにステラは俺に膝枕されている。


「エルト様、ウッドはララトマの所ですか?」

「ああ、今日はヒナを見に行くんだそうだ」

「なるほど……少ししたら、行きましょうか……」


 ステラもむにゃむにゃと眠そうだな。

 確かに四月に入り、心地良い春になった。


 ディアとマルコシアスはすでに寝落ちしてる。


「すやー……ぴよー……」

「わふ……わふ……」


 俺もちょっと眠いな。

 ステラの髪を撫でてると、彼女もお昼寝しそうな雰囲気を感じる。


「……一眠りしたら、俺達も様子を見に行くか」

「そうですね、そうしましょうか……ふぅ……」


 そうしてすやすやと俺達もお昼寝をする。


 本当に気持ちがいい。

 開けた窓から、柔らかい風を感じるのだ……。


 ◇


 コカトリスの宿舎。


 座っているウッドに寄りかかるララトマ。彼女の手のひらの上には、ヒナコカトリスが元気良くぴよぴよしている。


「ぴーよ! ぴよよー!」

「ウゴウゴ、かわいい……」

「本当にです!」


 ヒナはすくすくと育ち、ララトマの手のひらを超えるくらいの大きさである。


「ちゃんと育ってるみたいだねー」


 テテトカもララトマの隣に座りながら、ヒナを観察している。


「ちゃんとご飯も食べてますです!」

「ウゴ、いいことだね」

「いいことです!」

「ぴよー!」


 ぴょんとヒナはテテトカのほうへジャンプする。

 ぽむっとテテトカの膝へ着地する。


「ぴよっ!」

「おっととー、本当に元気だー」


 なでなで。

 テテトカがヒナを撫でて、それからふにっと持ち上げる。


「ぴよよー!」


 テテトカが羽をちょっとつまんだり、くるくると全方面からヒナを観察する。

 ぴかぴかの黄金の毛並みである。


「ふむふむ、ちゃんと水浴びもしてるね。きれいきれいー」

「ぴよー!」


 さらにヒナはてててーっとウッドの側に近寄る。


「ぴよ……!」

「ウゴウゴ、どうぞ!」

「ぴよっぴー!」


 ウッドが手を伸ばすと、その手のひらにすりすりと頬ずりする。


「懐いてるねー」

「ウゴウゴ、ディアもよくこうしてる」

「やっぱり安心できるんですよ。わたしもそうですし……」


 ちなみに親コカトリスは近くでじっとこの様子を見守っている。


「ぴよ……!」(人に慣れるんだよ……!)


 そんな感じだ。


 人にとってコカトリスが可愛いのと同じで、コカトリスにとっても人は可愛い。


 つるっとしてたりごつごつしてたりするのが、いい感じなのである。


「ふぁ……眠くなってきましたです……」

「ウゴウゴ、お昼寝していいよ」

「テテトカお姉ちゃん……」

「今日はもうやることないし、別にいいよー」


 そしてテテトカはふぁっとあくびをして立ち上がった。


「ぼくは植木鉢で寝るー」

「ウゴ、おやすみなさい……!」

「んー、おやすみぃー」


 テテトカはララトマの頭をぽんぽんと撫でて、宿舎を出て行った。


 なんとなく気遣ってくれた気がする。

 変わらないと思っていた自分もドリアードも、徐々にだけど変わっている。

 それは間違いなかった。


 ヒナはウッドの手にもたれながら、すでに寝ている。


 「すー……ぴよよー……」


 ララトマはそんな姉の背を見ながら、


「おやすみ、お姉ちゃん」


 と呟いたのだった。

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