356.巨大草だんごを持って

 ヒールベリーの村。


 ウッドがベリーマッシュルームをゲットした。

 パズルマッシュルームも大量に入手したし、一旦村に戻ってきたのだ。


 家につくとディアとマルコシアスが出迎えてくれる。


「おかえりぴよ!」

「おかえりなさいなんだぞ!」

「ああ、ただいま」

「ただいまです……!」

「ウゴウゴ、ただいま!」


 ウッドはずっと嬉しそうだ。

 それに気が付いたのか、ディアとマルコシアスが駆け寄ってくる。


「ぴよ! おにいちゃん、何かあったぴよ?」

「テンション高めなんだぞ」

「ウゴ……! これ、手に入れたの!」


 ウッドがすすっと吊り下げた革袋からベリーマッシュルームを取り出す。


 まさに真紅。形は小さいけど、綺麗な紅色だ。


「ぴよ……! これ、ベリーマッシュルームぴよ?」

「こんなに色が違うものなんだぞ」

「ウゴ、そう! これなら出来ると思う、草だんご!」

「ぴよよ! さっそく作るぴよー!」


 材料は家にストックしてあるので、問題ない。

 そういうわけで、実際に作ってみようか。


 テーブルに材料を置いていく。

 ベリーマッシュルームは……刻むのもウッドがやる。


「ウゴ……! できた。いよいよだね!」


 ウッド用の包丁があるのですぐに終わる。

 あとは材料と混ぜ合わせて、こねるだけ。


「どきどき、ぴよ!」


 用意した草だんごの大きさはかなりのものだ。

 ウッドの体格に合わせてなので、メガおにぎりといったところだな。


 手袋をしたウッドがいよいよ、その草だんごをこねはじめる。


 こねこね。

 こねこねこね。


「どうだ……?」

「悪くはなさそうですが……!」


 こねこねこね。


「ウゴ、手応えが全然違う! イケそうな感じがする……!」


 そばで見ていても、確かに固まり方が違う。


「くむくむ……。草だんごの匂いがしてきたんだぞ」

「できあがるぴよね!」


 こねこね、こねこね。


 そこでウッドが手を止める。

 目の前には巨大草だんごが出来上がっていた。


「ウゴ……! どうかな!」


 ウッドがででーんと草だんごを披露する。

 見た目には完璧だな。


「……触ってみてもいいか?」

「ウゴ、お願い!」


 つんと指先で触れてみる。


 ふに……。


「おおっ、出来てる! いつもの草だんごと同じ手応えだ!」

「ウゴウゴ! 良かったー!」


 ウッドが体を揺らして喜ぶ。


「やりましたね……! それじゃ、ついに!」


 ディアもマルコシアスも、この草だんごがプレゼント用とは知っている。


「きちんと包んで持ってくぴよ!」

「見栄えも大切なんだぞ……!」


 娘の意見に、ウッドは頷く。


「ウゴ、もちろん! 大切なプレゼントだから!」


 ◇


 翌日。


 ウッドはララトマを呼び出した。

 平日は人が少ない、第二広場にである。


 空は晴れ間が広がり、暖かな風が吹いている。


 ウッドはもちろん、先にベンチで彼女を待っていた。

 ララトマが大樹の塔からぽてぽてと歩いてくる。


「うー……なんでしょう、です……」


 姉からは草だんごを食べながら、手を振って送り出された。


 ララトマからすると、ウッドとの関係はうまく行っていると思う。

 でも、それだけじゃ全てはうまく行かない。


 ウッドは領主と野ボール大好きエルフの息子で、ディアぴよとマル犬の兄でもあるのだ。


 つまり、色々とあるのだ。


 ベンチにはウッドが腰掛けている。

 向こうもこちらに気が付いたようだ。

 手を振ってくれる。


 ララトマは意を決して、踏み出す。


 ……何の話だろうか。

 胸が張り裂けそうな気がした。

 しかし進まなければならないのだ。


 せめて――ララトマは元気良く挨拶する。


「ここここ、こんにちは、です!」

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