354.巨大パズルマッシュルーム

 一方、ヒールベリーの村。


 地下通路の探索は順調に進んでいた。

 こうやって進んで行くと、空気内の魔力が増していくのがよくわかるな。


 そして今日も今日とて、パズルマッシュルームを倒していく。


「ウゴー!!」

「てやー!」


 ウッドとステラの同時攻撃でパズルマッシュルームが吹っ飛ぶ。


 さっくさくだな。

 ウッドももう手慣れた様子で、手早く倒していく。


「ウゴ、おわったー!」

「お疲れ様、ウッド」


 最近、地下探索で変わった点もある。倒し終わった後、広場を調べるとキノコが色々と生えているのだ。


 ベリーマッシュルームもかなり紅くなってきた。


「……そろそろベリーマッシュルームも本命に近付いてきたか」

「ウゴ! そうだといいな!」


 ウッドにとっては念願の素材ゲットだ。けっこう掛かったな……。


 キノコを採集したブラウンが俺に近寄ってくる。


 今回は採集のお手伝いだな。馬車に乗りっぱなしもそれなりに辛いようだ。

 なのでローテーションである。


「検査に回すキノコは取り終えましたにゃん。このまま進みますにゃん?」

「ああ、行こう」


 あとでアナリアとイスカミナにキノコを渡し、検査

 してもらう。

 いきなり口に放り込むマネはしないのだ。


「……食べられそうな感じもしますね」

「そうだな。キノコは俺の魔法でも生み出せないし、何かの商売になれば……」


 そんな感じで話しながら、俺達は次の広場へと向かう。


「ぴよっー!」(よし、つぎー!)

「ぴよよ、ぴよー!」(キノコ狩りだ、すすめー!)


 コカトリスも二体、やる気満々で参加している。

 おかげでパズルマッシュルームが増えても、苦にならない。


 ……ちょっとずつパズルマッシュルームが大きくなっているが、まぁ大丈夫だろう。


 ウッドもぴよのニュアンスがわかってきたのか、腕を大きく振り上げる。


「ウゴ、負けないぞー!」


 ◇


 そうして地下通路を進み、次の広場へ……。

 光る苔で通路を照らしながら俺達は歩いていく。


「そろそろだな」

「ウゴウゴ、頑張る!」

「ええ……油断せず行きましょう!」


 通路の先、次の広場に到着する。

 順調だな。


 だが、そこで俺は驚愕の光景を目にした。


「うぉ、大きい……!」

「✕○▲ーー!!」


 広場にいたのは、天井にまで達しそうな巨大パズルマッシュルームだった。


 もはや見上げるようなサイズだ。

 ぼんやり苔に照らされ、威圧感もある。


「育ってますね、これは……!」

「でっかいですにゃん!」


 こんなパズルマッシュルーム、ゲームにいたか?

 いや……コカトリスもサイズの違いがあったんだ、他の魔物もあり得るのか。


「ウゴ……! 大きい!」

「大丈夫ですよ、これくらい……初めてですが、基本は同じはずです!」


 物理で解決、それは変わらないらしい。


「ぴよー……」(でっかー……)

「ぴよよー……」(たべであるー……)


 コカトリスも見上げてちょっと驚いていた。


「さぁ、いきますよー……っと、ヤバです! 撤退ー!」


 ステラが慌てて号令をかける。

 これまでも広場の入口にパズルマッシュルームが固まって、一時後退したことはあった。


 なので一糸乱れず、俺達は通路までダッシュで戻る。


「ぴよー!」(なんか戻れー!)

「ぴよよー!」(戻るー!)


 コカトリスもちゃんと付いてきたようだな。


 後ろを見ると……ステラが叫んだ理由がわかった。


 見づらいが、広場で緑色の煙がもくもく出ている。

 ゲームと同じなのですぐにわかった。あれがパズルマッシュルームの毒攻撃である。


 もっとも大気中に放たれると、割とすぐに無毒化されるのだが。緑色の煙が見えなくなれば安全である。


「……他の色がなくても、毒を出すのか」

「あの巨体の後ろに、他の小さなパズルマッシュルームが隠れている気配がありましたので」

「むっ……そうだったのか」


 さすがステラ。俺にはちっともわからなかったが。


「だが、そうなると厄介だぞ」


 これまでは毒を出す前に撃破してきた。

 だが巨大パズルマッシュルームの後ろに隠れている個体がいて、毒を出すとなると話は全然違う。


「おそらく毒を無視できるのは、ぴよちゃんとウッドくらいですね。わたしでも解毒のポーションは必要です」

「……だよな。ステラも毒を無効化できるわけじゃない」


 そう、つまりこれは――ポーションでゴリ押し、ウッド達だけで撃破か。

 それしか対策がないということなのだ。

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