348.湖でうとうとのんびり

 ナールの質問にシュガーがとほほ、という顔をする。


「ええ、もちろん。俺もちょっとは望みを持ってるんですがね」

「にゃー。あちしもそろそろ考える年齢にゃ」

「ナールも焦りがあるんで?」

「自分でもハードルが高いとは思ってますにゃ。でもあちし、仕事もあるし妥協はしたくないですにゃ」


 ナールは商会の長で冒険者ギルドでも役職に付いている。誰でも良い、ということではないのだろう。

 レイアもその節はあるし、それがわからないほどシュガーも子どもではなかった。


「ああ、そうですねい。責任があると中々……」

「そうですにゃ。そうなのですにゃー」


 シュガーの竿にくいくいっと当たりが来た。素早く竿をひゅっと振り上げる。


 草だんごのおかげで、当たりは早い。さっそくマルデホタテ貝を釣り上げた。


 それを見たナールがぱちぱちと拍手する。


「にゃ。幸先いいにゃ」

「どうも! ナールのほうも……あっ!」

「来たのにゃ!」


 今度はナールの竿が引いていた。

 手先の器用なニャフ族、すっと慌てずにナールも釣り上げる。


 ナールはしっぽをふりふり、にこっと微笑む。

 餌のおかげか、豊富な貝の数か。初心者のナールも釣りを楽しんでいた。


「にゃー。イイ感じにゃー」

「うまいじゃないですかい!」

「ありがとにゃ。貝は楽なのにゃ」


 笑い合いながら釣りを楽しむシュガー達。

 しばらく釣りをしていると、そこそこ釣り上げた成果が貯まってくる。


 釣り過ぎてはいけないので、適度なところで釣りは終わりだ。

 あとはのんびりボートを浮かべ、ゆったり過ごすだけである。


 ごろんとボートに寄りかかり、うとうと……。

 春の暖かさはお昼寝にはもってこいだ。


「にゃーん……」

「ふぁぁ……」


 湖にはいくつもボートが浮かぶ。


「にゃ。向こうにコカトリスが来てるにゃ……」


 たまにコカトリスも湖へ散歩に来る。

 シュガーが薄く目を開けると、岸辺には二体のコカトリスがいた。


「ぴよよー」(のびのびー)

「ぴよー」(およぐぞー)

「ぴよ、ぴよー!」(その前に体をほぐして、えっほほー)


 コカトリスはストレッチしてから湖へと入ってくる。和む光景だ。


「そう言えば、あちしはザンザスのダンジョンに入ったことないのにゃ」

「そうなんですかい? 十五年前からちょいちょいザンザスには来てたような……」

「にゃ、でもあちしらは商人にゃ。意外とダンジョンには入らないのにゃ」


 冒険者以外がダンジョンへ入るにはお金もかかる。


「へぇ、そうなんですねい」

「ザンザスのコカトリスはもっと大きいのにゃ?」

「そうですぜ。さらに横にも大きいっていうか……たぷっとしてるというか……」

「にゃるほど、たぷたぷしてるにゃね」


 コカトリスも湖に浮かんでいる。

 ぷかぷかと気持ち良さそうだ。


「にゃー。ボートを買って良かったにゃ……」


 シュガーは何気なく、ナールへ声をかける。


「今度、ザンザスのダンジョンに入ってみますかい?」

「いいのにゃ? 実はそろそろ、入ったほうがいいのかもと思ってたのにゃ」

「なぁに、浅い階層ならお安い御用ですぜ」

「にゃ、ありがとにゃー」


 ふにふにと手を振るナール。

 そのままうとうと、気持ち良く時は過ぎていくのであった。


領地情報


 地名:ヒールベリーの村

 野球チーム名:ヴィレッジ・コカトニア

 特別施設:冒険者ギルド、大樹の塔(土風呂付き)、地下広場の宿、コカトリス大浴場、コカトリスボート係留所、たくさんの地下広場

 領民:+1(ヒナコカトリス)

 総人口:256

 観光レベル:B(土風呂、幻想的な地下空間、エルフ料理のレストラン)

 漁業レベル:B(レインボーフィッシュ飼育、鱗の出し汁、マルデホタテ貝)

 牧場レベル:C(コカトリス姉妹、目の光るコカトリス、ヒナコカトリス)

 魔王レベル:D(悪魔マルわんちゃん、赤い超高速)

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