349.試運転、ふたたび
第二広場。
レイアとの話し合いを終えて、俺は第二広場にやってきた。結構な人数が野ボールをやっているな。
割と広めに第二広場は作ったが……近いうち手狭になりそうだ。
まぁ、土地はあるので問題はないが。
「エルト様、こちらです……!」
俺を見つけたステラがぶんぶんと手を振ってくれる。
「とうさま、お仕事お疲れ様ぴよ!」
「お疲れ様なんだぞ!」
「ああ、今から俺も……ウッドは向こうか。馴染んでいるようだな」
冒険者達のほうでウッドはバットを振っていた。
身体能力高めの集団だな。訓練とかで培った付き合いもあるし、良いことだ。
「ぴよー」(ころころー)
ベンチの近くでは親子コカトリスがぴよぴよ遊んでいる。
野ボールの球をヒナが転がしているのだ。
ころころ……ころころ……。
かわいい。
「よし、俺達も野ボールするか」
「やるぴよー!」
「運動するんだぞ」
「無理はいけないですからね」
そうして俺達も第二広場の人達に混じって野ボールをした。
ある程度ルールをまとめたおかげで、かなり野球に近いルールになってきたな。
まだ盗塁とかのルールは入れていないが。
「しゅっぴよ、しゅっぴよ」
バットを振るディアも様になってきている。
学習スピードが早まっている……と言うべきか。
文字の読み書きがディアを刺激して、さらに学びの力になっていた。
何にせよ、いい夏になりそうだ。
本格的な試合とかをしてもいいかもしれない。
夏はやはり、野球の季節だよな。
◇
それからまた数日。
俺達は地下広場に集まっていた。
魔導トロッコのお披露目だな。ちょっとだけ試作の路線ができたという。
「じゃじゃーんもぐ!」
イスカミナが誇らしげに魔導トロッコの試作路線を公開する。
おおっ、ちゃんとできてるな。
乗り込むための台――駅みたいなものだろう、それが始めと終わりにある。
路線の長さ自体は前とそれほど変わらない。
十五メートルくらいか?
ポンガも一仕事を終えて嬉しそうだ。
「ガハハ、路線自体は地上からの流用ですぞ。でも乗り込む場所も付けましたからな!」
「ミニ路線になっているな」
……ちなみにトロッコにはまた、アナリアが乗り込んでいる。
ステラに抱えられたディアがアナリアに問いかける。
「大丈夫ぴよ、アナリア?」
「ええ、大丈夫ですよ。今度もそんなに速度は――」
「うっかりするとドグシャッってなるもぐ」
「音が怖いんだぞ」
「ええ、この前とは全く違うようですね……」
イスカミナは駅の上に立つとぴょんとトロッコに乗り込む。
「わっ……!」
「アナリア、操作は私がやるもぐ!」
「それは心強い……!」
いや、それならなぜアナリアを乗せたんだ……?
重量的な意味合いか?
「ブレーキもちゃんと動くもぐ。機能的にはかなり充実してるもぐ」
そんなわけで、とりあえずの試運転だ。
「ぴよ! あたしも隣で走るぴよ!」
「競争もぐね! いいもぐよ!」
なんだかノリノリである。
でも面白くもあるな。前とどれほど違うのか……。
すでにトロッコの準備は出来ているらしく、俺が合図するだけだ。
「よし、それじゃいっせーに……スタート!」
俺が手を振り下ろすと同時に、ディアが全力で駆け出す。
たったったった……。
はやい、かわいい……!
成長の力が現れている。
だが――トロッコも速い。
猛烈に振動したと思うと、一気に加速する。
ギャリギャリ!!
ガタガタ、ゴトゴトゴト――!!
そしてディアを一瞬で追い抜いた。
「ぴよー! はやぴよー!」
「あわわわ!!」
「ここでブレーキもぐ!」
路線は短い。
トップスピードでいられるのは一瞬か。
ギギギギーー!
ブレーキが作動し、ゆったり慣性で走る。
あっ、これなら……。
「ぴよ! これなら勝てるぴよー!」
たったったった……!!
ディアも猛ダッシュし、路線の横を駆け抜ける。
「ウゴウゴ、もう少しー!」
「ぴよよー!!」
ゴールの間際にディアはトロッコを追い抜き、そのまま勝利する。
「ディアの勝ちです……!」
「やったぴよ! でもトロッコもはやぴよよ!」
「ああ、そうだな。両者ともよかったぞ」
トロッコの凄さはなんとなくわかった。場所が変わるだけでこうもパワーが違うんだな。
これは領地の力になるだろう……。
終点にたどり着いたイスカミナもサムズアップしている。
アナリアは――目をぱちくりさせているが、同じくぐっと親指を立てていた。
競争の結果がわかっていたとしたら、なかなかの計算だな……。
「これが魔導トロッコもぐー!」
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