273.魔導トロッコ計画

「にゃーん……。なるほどですにゃん」


 上にブラウンがいるということで、急遽皆にも来てもらった。

 そのブラウンは今、地下広場に降りてもらっている。


 ハットリが上に登り、ブラウンを連れて戻ってきたからな。というかさすが忍者だ。


「お手の物でござる」


 ちょっとした足場でぴょんぴょん跳ねることができるんだから……。


「ハシゴ作りは任せてくだせえ。まずは出入り口をちゃんと作らねえと」

「ああ、頼む」


 アラサー冒険者のほうは、俺の生み出した木材からハシゴ作りである。


「ザンザスへ行った帰りとはな。すごい偶然だ」

「にゃん。いつも通る道なのですにゃん……でも地下広場がもうひとつあるとは驚きですにゃん」


 ブラウンが坂の上から地下広場を眺める。


「ウゴウゴ、同じみたいに見える」

「ですにゃん。匂いもかわらないですにゃん……」


 しっぽをふりふり、うっとりするブラウン。


「とりあえずパズルマッシュルームを排除して、安全は確保したが……」

「ぴよぴよ……」(もにゅもにゅ……)

「ぴよぴよぴよ……」(もにゅもにゅもにゅ……)


 コカトリスはちぎったパズルマッシュルームを抱えて、噛んでいた。

 スルメイカが大好きな人みたいだな……。えんえんと噛んでるみたいだが。


「ここはエルト様の領地内ですにゃん。好きなように使えますにゃん」

「やはりそうか……。しかしどうしたものだろうな」


 街道沿いにはすでに、俺が作った大樹の家がポツポツと建っている。

 休憩地点として利用できるようにな。


 村の地下広場はコテージみたいなので運用しているんだが……。


「もぐ! それなら魔導トロッコはどうでしょうもぐ!?」

「魔導トロッコ?」


 イスカミナがぽにぽにと歩いてくる。


「ドワーフさんや私達モール族がよく使う、地下移動用の魔法具ですもぐ。ここの地下通路なら条件はばっちりですもぐ!」


 魔導トロッコ……ゲームでも移動用のギミックとしてはあったな。

 爆走して坑道を走り抜けるのは爽快だった。

 イベントでクラッシュしたりするのもお約束だったが……。


 この世界でも本に書いてあった気がするが、どれほど普及してるかは知らないのだ。

 少なくともザンザスにはなかったように思う。


「ドワーフやモール族ではよく使われているのか?」

「もぐ! 多少の魔力がないと効率が悪くなるのですもぐが……ここなら地面の状態、魔力の濃度ともに大丈夫ですもぐ!」

「ウゴ、魔力がないとダメ?」

「魔力のないところだと、馬のほうが良くなっちゃいますもぐ」


 なるほど、ここの地下は確かに魔力の濃度が濃くなっている。それが重大な条件になるんだな。

 それだと使っている地域はごく一部になりそうだな。


 ……というか、割とすごくないか?

 村からザンザスへ輸送路が整備されるということになる。


「ザンザスでは魔導トロッコは使われているのか?」

「いや、話に出たこともないはずですぜ。魔力が条件になると、そこにはたいてい魔物がいますからね」

「それもそうだな……」


 ここぐらいの魔力の濃さでもパズルマッシュルームがいる。

 魔物の排除には当然手間もお金もかかるが……。

 ドワーフやモール族はトロッコの先で多分、採掘をしているんだろうな。その利益があるので魔導トロッコの採算が合うんだろう。


「その魔導トロッコはイスカミナは作れるのか?」

「お金は必要だけど、作れますもぐ! 一級魔導トロッコ製造士と整備士ですもぐ!」

「すごいですにゃん……! トロッコが走るかもですにゃん!?」


 ブラウンがキラキラとした目で地下広場を見つめる。途端に話が大きくなってきたが……でもやりがいのある話だ。


 ここの地下なら雨や風も関係ない。

 道がぬかるむこともないしな。


「よし、詳細は後で詰めよう」


 ナールにも相談して、経済的効果を算出しないとな。話し振りからすると、良さそうに聞こえるが。


「お昼ご飯を食べたら、もう少し奥へ進みたい。大丈夫か?」

「ええ、大丈夫ですぜ!」

「パズルマッシュルームがどの程度いるか、把握したいでござるからな」


 あくまでも障害物は一時的処置だ。

 魔導トロッコを進めるなら、出来る限り全容は把握したい。

 いざ建設してからパズルマッシュルームがたくさん現れました――では話にならない。


「ウゴウゴ、俺もイケる!」

「ぴよー!」(もっとキノコー!)

「ぴよよー!」(今日はたぷを減らすのだー!)


 ……それと真紅のベリーマッシュルームも探したいからな。


領地情報


 地名:ヒールベリーの村

 野球チーム名:ヴィレッジ・コカトニア

 特別施設:冒険者ギルド、大樹の塔(土風呂付き)、地下広場の宿、コカトリス大浴場、コカトリスボート係留所、第二地下広場

 総人口:243

 観光レベル:B(土風呂、幻想的な地下空間、エルフ料理のレストラン)

 漁業レベル:B(レインボーフィッシュ飼育、鱗の出し汁、マルデホタテ貝)

 牧場レベル:C(コカトリス姉妹、目の光るコカトリス)

 魔王レベル:D(悪魔マルわんちゃん、赤い超高速)

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