ニャーん

いつも通る路地裏に野良の赤猫がいる。


ニャーン ニャーン


私の顔を見ると甘えた声で鳴きながら体を擦りつけてくるので、いけないと思いつつも通るたびにカリカリをひと握り与えていた。

その日、いつものように足元で体を擦りつけ甘く鳴く赤猫へカリカリを与えようとしたところ、カリカリを忘れたことに気づきその事を詫びた。

「ごめんね、来る前に鞄を変えてカリカリ忘れちゃった。」


ニャーン ニャーん…ちっ


赤猫は舌打ちして体を翻すと大きく伸びをしながら悠然と路地の奥に消えていった。

それ以来、私は猫が少し怖い。

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