異世界薬草と心のカルテ

わをん

記憶

第1話

俺がこの世界に来てからそろそろ1年が経つ。仕事はなかなか慣れないが、この世界の雰囲気には何となく慣れてきたような気がする。

大きな城とそれを囲む城下町、壁の向こうに広がる化け物たちの森、ここはそんなファンタジックな場所であり、住んでいる人々もまあ随分と雑多だ。人間のみならずエルフに獣人に魚人。本当におとぎ話みたいだ。

俺はそんな異世界にどういうわけか転生してしまったわけで、何とか仕事を見つけてやりくりしている。ただ、ちょっとだけ俺の職場は特殊だ。

「すみません、うどんげとユニコーンの角と大蛇の牙をすりおろしたものをいただけますかね」

「ええっと、うどんと角とそれから」

「ユウくん、うどんげね。うどんじゃないわ」

「あー、すみません。今お持ちしますので少々お待ち下さい」

そう、俺の職場は薬草店。それもまた露店みたいな小さい店じゃない。世界中の薬草や珍味が集まる世界一大きな薬草店。どこから来たかもわからない人達がわんさか集まってくるわけで、仕事量も伊達じゃない。

「お待たせしました。こちらになります、合計で50ペニーですね」

「あら、どうもありがとう。あなた新入りさん?」

「一応働いて一年ほどです、ははは」

「あら、じゃあまだまだ新参者じゃない。はきはきしてていいわ、その調子で頑張ってね。、、、ん?」

目の前のご老人が袋の中の匂いを嗅いで立ち止まった。

「どうかなさいましたか?」

「いやちょっと袋から変なにおいがしてね。あたしが頼んだ薬こんな変わった匂いなの?」

「少しお貸しいただいてもよろしいですか?」

クンクン、たしかにちょっと変なにおいだ。

「聞いてまいりますので少々お待ち下さい」

俺は急いで奥の部屋へ向かった。

「ユウサク、どうしたの?」

奥の部屋で薬の調合をしていたメリアが尋ねた。

「メリア、お客さんからうどんげとユニコーンの角と大蛇の牙を頼まれたんだけどこれであってるよな?」

薬を渡すとメリアは瓶をちらりと見てため息をついた。

「うどんげと馬糞間違えてる」

慣れるまではまだまだ随分と長い。

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