ロケーションFー1 大祓③

 【登場人物】


坂本 章(15)……学生



佐倉 菜花(16)……高校生アイドル



鮎川 まりな(27)……崖っぷちアイドル


水森 あの子(17)……高校生アイドル



藤森 敦彦(45)……パーサー

片岡 冴子(39)……客室乗務員


中田 慎吾(53)……医師


【あらすじ】


 アイドルコールを知った『ばあじ』と坂本くんは、一般客席に行った。

 そこには、アイドル欠乏症の中田がいた。


 冴子が『ばあじ』に正式に中田の介抱を依頼した。

 坂本くんは、気安く引き受けた。


 まりながアイドルスマイルを中田にかました。

 中田は無反応だった。


 あの子は、中田を介抱するのを拒否した。

 過去の自身のファンであることがその理由。


 人命優先と言って熱り立つパーサー。

 冴子はあの子を理解し、別の方法を探そうとした。


 さくらは、プレミアム客席が無人なことに気付いた。

 あの子にきつく介抱すること言い付けた。


 そして自分は坂本くんを連れて、プレミアム客席に下がった。

 坂本くんとさくらはキスをした。割と長め。


 そのとき、あの子は見てしまった。

 中田の待受が山吹さくらに代わっていることを。


 あの子は決意した。

 絶対に中田を救うと。


◯JANA国内線・機内・一般客席(早朝)


   ばあじと坂本くん、中田の前に駆けつける。


さくら「酷いわね、こんなになるんだ」

まりな「さくらん、面白がっちゃダメ」

冴子「何ですか、貴女たちは」


坂本くん「えーっ。アイドルです」

冴子「しっ、知らない」


(ナ)「ばあじは、まだまだなのだ」


冴子「(真顔で)背に腹は変えられない。介抱していただけますか」

坂本くん「はい。よろこんで」


さくら「じゃあ、あゆまりさん、ちゃちゃっと介抱しちゃって」

まりな「分かりました」


   中田に正対する、まりな。


まりな「中田さん、アイドルですよーっ」

中田「(泡を噴きながら)あい、どる」


   中田、症状を悪化させていく。


さくら「(あきれて)ダメじゃん」

まりな「結構なハードモードです」


さくら「じゃあ、次はあの子さん」


さくら(M)「あれ。今現在、プレミアム客席は無人なんじゃない」


さくら「(語気を強く)できるまで繰り返しなさいね」

あの子「いいえ。私には無理です」


さくら「何でよ。何でムリなのよ」

あの子「だって慎吾ちゃん、私のファンだもの」

藤森「だったらなおのこと。人命救助にご協力を」


あの子「したいのは山々だけど。ムリです」

冴子「致し方ないわね」


藤森「冴子くんまで。何でムリなんだ」

あの子「特定のファンへの特別扱いは禁物」

冴子「それが、古今東西アイドルの掟」


藤森「(語気を強めて)そんなあほな。人命がかかってるんだぞ」

あの子「(キリリとした顔で)はい。あほの子あの子です」

冴子「(あきれて)それは関係ないと思うけど」


まりな「仕方ありません。ここは私が」


   中田、さらに容態を悪化させて。


中田「(泡を噴きながら)あああ、ああぁ」

さくら「意地を見せなさい、意地を」

まりな「はい。やれるところまでやってみます」


さくら「(真顔で)よし、じゃあここは2人に任せるわ」


   さくら、坂本くんを手押し車してプレミアム客席に移動していく。


坂本くん「どうしたの、さくら」

さくら「(恥ずかしがりながら)今がチャンスなの」


まりな(M)「あーっ。さっきの続きか」

あの子(M)「さくらさん、自由過ぎる」


◯JANA国内線・機内・プレミアム客席(早朝)


   見つめ合う2人。


坂本くん「(笑顔で)さくら」

さくら「(笑顔で)坂本くん」


   あひる口になる、さくら。

   キスをする、2人。


◯JANA国内線・機内・一般客席(早朝)


   中田のスマホが落ちる。

   あの子、待受を見る。

   そこにはさくらのワンピース姿の画像がある。


あの子(M)「いやだ。この人はもう、私のファンじゃないんだ」


あの子「(元気に)私、やります」

冴子「ダメよ。貴女のファンなんでしょう」


あの子「いいえ。もう推し変してるみたいですから」

冴子「そう、辛いわね。がんばって」


あの子「はい。ありがとうございます」


(ナ)「あの子は中田を救うことができるのでしょうか」


======== キ リ ト リ ========


もう特別じゃない。切ないです。


いつもありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いいたします。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る