ロケーションDー1 #おにぎりの日

【人物一覧表】


坂本 章(18)……学生


佐倉 菜花(18)……アイドル


【あらすじ】


 翌日に青森県での朗読イベントを控えた坂本とさくら。


 気まぐれにお弁当を作ると言い出したさくら。


 坂本は早くお家に帰りたくて仕方がない。キスがしたいからだ。


 さくらだってキスがしたい。


 だが、さくらはどうしても愛情たっぷりのお弁当を作りたかった。


 そこで坂本も巻き込んでお弁当のおかずを決めることに。


 坂本は、ポスターを見て咄嗟に『おにぎり』を提案。


 さくらもおにぎりに同意。2人で具材を買いまわる。


 途中、天むすがおにぎりなのかを議論。


 ほのぼのとした雰囲気の中買い物が進行。




 さくらのホテルに戻った2人は、早速下ごしらえ。


 そのときに坂本は気付いてしまう。


 おにぎりの日は今日、6月18日なのだ。








(ナ)「これは、少し未来のおはなしです」


◯近所のスーパー・食品売り場(夜)


   人もまばらで閑散としている。


   さくら、食材をあれこれと選ぶ。

   それを見て腕を組み指をトントンとしている、坂本。


坂本「さくら、まだなの?」


さくら「坂本くん。そんなに急かさないでよっ」


坂本「いい加減決めなよ!」


さくら「そんなに簡単に言わないでよ。どれも美味しそうだから悩むのよ」


坂本「お弁当なんて作んなくてもいいじゃん。時間がもったいないよ」


   さくら、身体をのけぞらせながら、


さくら「(大声で)なっ、なんてことを言うの!」


坂本「(けむたそうにして)おっ、大袈裟だよ。そんなにしなくても!」


さくら「いいえ。これは由々しき事態よ、坂本くん!」


坂本「どっ、どうしてさ……。」


さくら「いい? お弁当には愛情がたっぷりなわけ。分かる?」


坂本「まぁ、なんとなくは、分かるよ……。」


さくら「だったら、お弁当を買うってどう言うことよ?」


坂本「美味しいってことだろう?」


さくら「(大声で叫ぶように)ちがーう! 今、すごい失礼なこと言ったよ!」


   言いながら身体を固くして縦に伸ばす、さくら。


   ぷるんと揺れるさくらのおっぱい。


   坂本、身を退け反らせながらもしっかりとそれを見ながら、


坂本「ごめん、冗談。さくらの手作り弁当も美味しいよ!」


さくら「ふむふむ。美味しいだけ? 他に感じることはない?」


   坂本、左掌を右拳でポンと叩きながら、


坂本「あー、それが愛情ってことか!」


さくら「(あきれて)もう。気付くのが遅いわよ!」


坂本「(頭を掻きながら)ごめんごめん」


   腕を組むさくら。


さくら「ったく。人が折角、愛情たっぷりのお弁当を作ろうってのに」


坂本「(しょぼくれて)俺は早く家に帰ってキスがしたかっただけなのに……。」


さくら「(バツが悪そうに)そっ……そうだったの。それは、そうかも……。」


   坂本、元気を取り戻す。


坂本「(どや顔で)だろう? だから早く帰ろうよ!」


さくら「だったら、坂本くんも協力して!」


坂本「(驚いて)えっ?」


さくら「どんなお弁当がいいか、アイデア出してよ!」


坂本「それは……ネタバレしちゃうやつじゃん」


   腰に手をまわすさくら。


さくら「いいじゃないのそれくらい!」


坂本「えーっ。お弁当箱を開ける瞬間が楽しみじゃなくなっちゃうよ」


   腰から上を曲げ身を乗り出すような姿勢になる、さくら。

   右手人差し指を立て、坂本に向けて振りながら、


さくら「つべこべ言わないの! 早くキスがしたいんでしょう!」


坂本「うっ、うん。ん、あれ!」


   ポスターに気付く、坂本。

   ポスターには『6月18日はおにぎりの日!』とある。


坂本「おにぎりの日! そうだよ、おにぎりにしよう!」


さくら「えっ、いいの? そんな簡単なので」


坂本「だって、今日はおにぎりの日だっていうから」


さくら「なるほど。じゃあ、それにしましょう」


   2人、食品売り場をまわる。


さくら「坂本くん。具は何が好き?」


   坂本、腕を組んで、


坂本「そうだな。塩、かな」


   坂本の方に振り返る、さくら。


さくら「何よ、それ!」


坂本「だって、美味しいじゃん!」


さくら「分かるけど。折角だからもっといいのにしようよ」


坂本「(考え込んで)そうだなぁ。じゃあ、鮭かな!」


さくら「うんうん。他は?」


坂本「(考え込んで)海老天?」


さくら「それだと、別のものになっちゃうわ」


坂本「いいじゃんか。天むすもおにぎりのうちじゃない?」


さくら「そうかな。でも『むす』だから、おむすびなんじゃない?」


坂本「えっ? そもそもおにぎりとおむすびって同じじゃん!」


さくら「違うわよっ! おむすびの日だってあるんだから!」


坂本「(えらく驚いて)マジか! 別にあるんだ……。」


   スマホをいじる、さくら。

   画面を坂本に見せながら、


さくら「そうよ。ちなみに天むすの日もあるわ! ほらっ」


坂本「(白目で)そんな……バカな……。」




◯佐倉のホテル・キッチン(夜)


   テーブルの上には食材が並ぶ。

   鮭の切り身、ツナ缶、マヨネーズ、鰹節、醤油、塩、梅干し、のり。


さくら「今日は鮭を焼いて、ツナマヨを和えるところまで」


坂本「うん。明日にはささっとにぎってお出かけだね」


   腰に手を当てる、さくら。


さくら「(どや顔で)あゆまりお姉さんとあの子さんの分も作るわ」


坂本「(笑顔で)そうだね。俺もロールケーキ作ろうかな」


さくら「(顔を引きつらせて)やめて! 社長までついてきちゃうわ」


坂本「本当だ。それは、それだけは避けたいっ!」


   腕を組む、さくら。


さくら「でしょう。だからロールケーキはなしよ」


坂本「分かった。けどさくら、俺、とんでもないことに気付いちゃった!」


さくら「(怯えながら)なっ、何よ……。」


坂本「明日って、おにぎりの日じゃないよね……。」


   さくら、固まって、


さくら「(驚きを隠せないと言った表情で)なっ……。」


(ナ)「坂本家は、今日も平和だった」

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