第17話

 センちゃん:サエキ超ムカつく。死ね


 イーコ:いつの間に久世君と仲良くなったの?…サエキのバカ


 モッチ:アプリは妹の手柄だよ。なんでサエキが威張ってるんだか


 センちゃん:そういえば図書館でサエキと久世がイチャイチャしてた所、見かけた!


 モッチ:この間、2人が動物園デートしてたって噂あったよね、本当かな?


 イーコ:…付き合ってるのかな?サエキ許せない


 センちゃん:ぬいぐるみ女サエキ、キモ。モッチ、あんな部活早く辞めれば?手芸部ダッサ!


 イーコ:活動してます、って内申書アピールのためでしょ。活動なんかよりあの人達はお茶飲んでるの。お茶大好きだからサエキは


 モッチ:内申書のためには、ユーレイ部員やるしかないんだよ〜


 センちゃん:そういえばさ、ビヤかわくん新曲出したよね!コトリノハ


 イーコ:コンサート、当たるかな?


 モッチ:絶対行く


 イーコ:久世君ってさあ、ZABCのセンターの男の子に似てない?


 ………。




 瑠衣は、深くため息をついた。


 つまんないモノを、見てしまった。


「間違い無く私だね、サエキは」


 理衣は、瑠衣に聞いた。

「どうするの?サエキは」


 瑠衣は、キッと妹を睨んだ。

「アンタもサエキでしょうが」




 こうなる事は、予測済みだ。


 トオヤと友達になると決めた瞬間から、思いっきり覚悟していた事だ。



 でも、酷い。



 自分の事は何を言われても別に構わないが、手芸部の悪口まで言うなんて!


「サエキはどうしよう…」


 急に思い出して、サエキ瑠衣はサエキ理衣に怒り出した。


「それよりも理衣!!これって犯罪行為じゃない?」



 あんたは警察組織か、ハッカーか!

 毎度毎度、ドラえもんみたいな事をして!



「何だか、お姉が最近ピリピリしてて危なそうだったから、調べさせてもらっただけ」



「こんな事して、あんたが警察に捕まったら、どうするのよ!!」



 理衣は、拳を胸に当てて神妙な顔をしてこう言った。

「うまく逃げます」


 瑠衣はため息をついた。

 日の当たる場所で、生活して欲しい。



 悪口や噂話を言うのが大好きな人達は、仙崎さん達に限らず、どこにだっている。いちいちこういう人達を真正面から相手にして、大切な時間や気力を使ってしまうのは、とても勿体無い。



 いきなり現れた美少年のトオヤが瑠衣と仲良くし始めたら、飯田さん(イーコ)みたいにヤキモチを焼く人だっているし、その気持ちも少しはわかる。



 だけど、文句があるなら堂々と、正面からハッキリ言って欲しい。仙崎さん(センちゃん)なら、LINEで悪口言わなくたってズバッと本人に言えそうなものだ。コソコソとこういう方法で、バレない様に悪口を言うのは、卑怯で卑劣だ。



 それに、望月さん(モッチ)!

 影で人の悪口言ってないで、早く部活に戻って来てよ!!



 自分が友達としたいのは、こんなに下らない会話ではない。絶対に、ない。



 ビヤかわくんのコンサートの話以外は、クズ会話だ。




「どうしよっかな…」








 月曜日の昼休み。


 瑠衣は、仙崎さん達3人グループが、お弁当を食べている席に、つかつかと歩み寄った。


「私も一緒にお弁当、食べてもいい?!」



「…」


「…」


「…」


 3人は、絶句した。


「ハア?」


 瑠衣は彼女達の座る机に、いきなり近くにある机をピッタリとくっつけて、お弁当を食べながら話し出した。


「私もビヤかわくんのコンサート、申し込んでるの」



「…?」




 瑠衣は、続けて仙崎さんを見ながらこう言った。



「仙崎さん、もしお互いに抽選当たったら、私も一緒に行っていい?コンサート」




「…」



 いいわけねえだろうが!!

 …という仙崎さんの顔。


 それはそうだろう。


 瑠衣は、今度は飯田さんの方をじっと見た。



「トオヤとは付き合ってないよ。ただの友達」



 瑠衣は、急に思い出して付け加えた。



「でも私、トオヤはZABCのセンターのカジモド君には、全然似てないと思う」




「…」


「…」


「…佐伯さん、何を…」



 瑠衣は、3人を睨みつけ、有無を言わせない口調で、こう言い放った。



「『ぬいぐるみ女サエキ』でいいよ?…みんな5分でいいから、明日の放課後、キモい私に付き合ってくれない?手芸部の活動、見て欲しいな」



 有無を言わせない。

 絶対に、逃がさない。

 そういう口調で、瑠衣は言い放つ。




「ハア?!!!」



 何で、私達が!!!



 という顔つきで仙崎さんが、目を吊り上げながら何かを言おうとした、その時。



「俺も行きたい」



 購買部にパンを買いに行っていたトオヤが、教室に入って来た。



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