クロウリー異伝

瑠璃香介

あらすじ

 アレイスター・クロウリーことエドワード・アレグザンダー・クロウリーは、1875年、イングランドのビール酒造業者の家に生まれ、幼少から厳格なキリスト教教育を受ける。10歳の時、キリスト教の寄宿学校に入れられるが、その厳格な宗教教育に反発して退学、オカルトを志向するようになる。2年後に父エドワード死亡。多額の遺産を相続し、以後は遺産のみで生活する。その後、ケンブリッジ大学卒業間際にオカルト結社である「黄金の夜明け団」の団員と接触、入団してその教義を学ぶ。「黄金の夜明け団」では、サミュエル・リドル・メイザースに師事。メイザースを尊敬していたが、クロウリーはバイセクシャルだったため、加入時点で団内の対立を引き起こし、さらにメイザーズの全権代理として教団から文書や魔術用具を差し押さえようとするなど、当時すでに不安定に陥っていた団体の状況に、さらなる混乱の拍車をかけてしまう。やがて彼はメイザースと反目し、2人は魔術合戦に突入。メイザースが手を引く形で、魔術合戦が集結。1900年、団の内紛に紛れる形でクロウリーは脱退し、同団を影から設立したと言われる伝説の「秘密の首領」を探すため、メキシコ、インドネシア、セイロン、横浜などを巡って魔術の研究を深める。1904年にエジプトのピラミッド内部において、妻ローズに守護天使エイワスが憑依。3日間、自動言語(トリップ状態の際に発せられる言葉)を筆記し、「法の書」を書き上げる。1907年に「法の書」研究と出版のため、魔術結社「A∴A∴」(銀の星)をロンドンに設立。エイワスのメッセージを「旧き儀式の排除」と読み解き、「古き時代の儀式は黒きものなり、邪悪なる儀礼は捨て去るべし。善き儀礼をば預言者にて清めせしめよ。さればこの智は真なるものとならん」として精力的に活動するが、娘の死と妻の離婚という不幸に見舞われてしまう。その失意によってか、エイワスのメッセージに従ってかは定かではないが、結界に頼らぬ無防備魔術やドラッグ、酒を使った性魔術に深く傾倒。1909~1913年に個人発行していた「春愁分点(イクノイックス)」において、黄金の夜明けの諸秘技を暴露し、一般市民のみならず多くの魔術結社まで敵に回してしまった。1920年、シチリア島ケファルに「テレマの僧院」と称する施設を設立したが、ドラッグを用いた性魔術の多用で若者が病死したことから捜査のメスが入り、ムッソリーニによって国外追放された。イギリスへ戻ろうとしたが、マスコミの影響で政府に拒否され、フランス、チュニジア、ドイツを転々とした末、1937年にやっと帰国が叶う。故郷で、彼はチャーチルの招きを受け、思わぬ形で歴史に爪痕を残した。晩年は麻薬中毒に陥り、世間からほとんど忘れ去られ、赤貧のうち「俺は困った」と言い残して72歳で死去した。

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