誰もが知っているラブコメ

朱紀侍音

#1.誰もが知っているラブコメ


 品行方正、容姿端麗、文武両道、栄華発外、科挙圧巻、才色兼備、純情可憐、純真無垢、博識多彩、八面六臂、詠雪之才、仙姿玉質などなど多数諸々。色々ネットで調べてみた四字熟語。これらは人を褒める際に使うものだが、世の中にはその全てが当てはまる女子生徒がいた。

 その名は虹ヶ浜彩にじがはま あやである。

 国内屈指の進学校において学年一位の学力の持ち主であり、勉学のみならずスポーツテストでは全国女子一位。各部活動から数多オファーがかかる程である。芸術の分野においても描かせれば大賞、書かせれば芥川賞、歌わせればグラミー賞、イグノーベル賞を獲れるアイディアやユーモアだって忘れない。もちろん後半は獲ったことはないが、本気を出せば数年で獲れると言われている。

 言わずもがな超絶美少女である。黒髪ロングのTHE清楚系である彼女は一体どんなケアをすればそんなにサラサラの髪になるのか。“百万年に一人の美少女”というある女優より三桁も更新し、こちらも数々の芸能事務所からのスカウトが絶えやまないほどの美しさ。

 これだけの存在でありながら、虹ヶ浜は告白されたことはない。それはもはや尊き存在として隣に並んで歩けるものはいないとして既に暗黙の了解となっていた。


 そんなどれをとっても右に出る者はいない虹ヶ浜だったが、彼女には昔から想いを寄せる人がいた。

 無色透むしき とおる──彼が虹ヶ浜の想い人で今、彼女の目の前にいる。

 彼もまた完璧なイケメンだった。内容は同じことを書くので省くが、世界で虹ヶ浜に匹敵するのは無色くらいである。

 イケメンならば保有してそうな身長178cm、体重は程々にいい感じで体格もいい。無口無感情の彼は特に何かしたわけではないのに学内にファンクラブがいるのだ。

 ちなみに虹ヶ浜にファンクラブはない。彼女を崇める宗教団体があるだけ。


 幼少期、家が隣同士だった二人は昔からよく遊んでいたが、虹ヶ浜の家の仕事の都合による引っ越しで離れ離れになってしまったのだ。

 その頃から今と変わらず無口無感情で完璧なイケメンショタだった無色と付き合うために前述した偉業を成し遂げるくらい努力で積み上げてきたのだ。

 そして、高校で運命の出会い。大人になってから捜しにいくつもりだったが、こうして神様の悪戯によって青春を刻む華々しい高校生活に二人を引き合わせたのだ。さっきから神は贔屓が過ぎる。


 前置きは長くなったが、無色に相応しい女となった今! 告白する時が来たのだ……!


「透くん……ずっとあなたのことが好きでした。私と付き合ってください」

「はい」

「透くん……! ……なにこれ」

「フルーレ」

「フェンシングの武器‼︎」


 いきなり渡された武器に虹ヶ浜は困惑するも、無色は既にフルーレを構えている。


「ずっとあなたは隙ありです。私と突き合ってください。だろ」

「とんだ聞き間違いだよ! てか、なんで持ってるのひゃぁ⁉︎」


 フェンシングが始まる。

 ルールとか試合の流れだとか分からないのでその辺省略。二人は分かっているからいいのだ。

 勝負の報告だけすると勝者は虹ヶ浜。


「……勝てないか」


 と、無色は去っていった。


「……ま……また告白出来なかったぁぁ!」


 幼少期の頃も、高校生になっても告白は出来ず。

 その後も普通のアタックじゃ無意味だと悟った虹ヶ浜が様々な方法を使って告白しようとする色々と残念な勘違いラブコメが始まる。




   ◇ ◇ ◇







 だが、それだけではない!

 メインは虹ヶ浜に当たるが読者の方には知ってもらいたいのはこの二人、実はであること。


「……また話せなかった……」

(やっぱり彩ちゃんめちゃくちゃ可愛いな! もっと色々喋りたいのに喋れないから逃げちゃったし、てか告白もされたぁぁやったぁぁぁ嬉しいぃぃ‼︎ ……けど、俺にはまだ彼女の彼氏には相応しくない。昔から完璧美少女だった彼女に追いつくために子供の頃からずっと必死で勉強も運動も頑張ってきたけど、今の彩ちゃんはより一層神に近付いてしまっていた……! 告白は嬉しい。けどまだだ。彼女に追いついたら俺から告白する。その時までは彼女の告白はどうにか避けなければ……!)


 心の中ではめちゃくちゃ喋る無色透。彼の弱点は唯一、感情表現が超絶苦手なだけなのだ。今こうして一人で考えている間も顔はずっと無表情。


 この物語は、虹ヶ浜以外はみんなこの二人が両想いだと知っているラブコメである。

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