第46話
キオナは空回り
ずらーと立ち並ぶ使用人さんたち。
頭を一斉に下げられ、視線がばちばち
あたり、なんだか痛い。
「シューガー様、おかえりなさいませー。」
「メイプ、こちらは私の命の恩人だ。
丁重に"オモテナシ"してあげて欲しい。」
「これまた、可愛い子が2人も。
一番良い部屋をご用意させます。」
メイプと呼ばれた執事っぽい年配の方は
他の使用人に指示を飛ばし、
奥に消えて行った。
「私達は、お茶と軽くつまめるもんでも
食べようかね~。」
頭を下げ、静かに消えていく使用人さん。
シューガーさんは、ご当主か何か偉い人
なんだよな?
なぜか、さっきから大きな男から
抜け出そうとしているんだけど、
ガチムチの太い腕を外せそうにない。
抜け出して、マコト様を奪取して
さっきの玄関……。
人数が多すぎる。魔法、さっきのは
マコト様を抱えながらでは危険。
どうしよう。
アレコレ考えていたら、お腹が空くような
匂いと共にサンドイッチ、小さなプチケーキ
見た事がない美味しそうな食べ物や
飲み物が並べられていた。
「さあ、一緒に食べよう。」
魅力的な食べ物が並んでいた。
そういえばお城を抜け出してからは
何も食べてなかった。
マコト様は大丈夫だろうか?
あっ、またシューガー様のお腹を
モミモミして幸せそうな表情をしてるよ。
「よほど私のお腹が気に入ってくれたんだな。
痩せるのはまた、今度にしよう。」
グゥ~。
「シューガー様は、お痩せになる気なんて
サラサラないでしょ。」
「おや、プーちゃんひどい。私だって
たまには靴紐を自分で結びたい事も
あるんだよ。だけど、お腹のお肉が
邪魔するんだよ。」
グッグゥ~。
「いつも使用人さんが、頑張って
くれているじゃないですか?」
ギュルるる~。
「だから、たまにはって言うただろ。
プーちゃんよ。お膝の可愛い子に食べさせて
あげようよ、なんだか涙目になってるよ。」
「……。」
「あっ、ああ、すまん。どれにする?」
グゥ~。
シューガーさんが、パクパク食べてるから
毒はないだろう。
「うっ……むぐっ。」
上の段のプチケーキって言おうとしたら
小さいカットのサンドイッチを口に
放り込まれた。
もぐもぐもぐもぐ…ぐっ、ぐっほっ
ゴホッ、ごホッ。
「ほら、急がなくても、この男なら
たくさん食べものを出してくれるぞ。」
そう言いながら、背中をさすり
果実汁が入ったコップを口に当ててくれた。
かなりこぼしてしまった。
ゴホッ。
「す、すみませ……ゴボッ。」
「あぁ、大丈夫だから、しゃべるな。
着替えなきゃな。ゆっくり少しずつ
よく噛んでから食べろ。」
「……はい、すみません。」
「子どもが遠慮するな。おい、ニヤニヤ
見てないでシューちゃん、この子の
服とか、何か用意してくれ。」
「はいはい、プーちゃん、春だねー。」
「あほ抜かせ、ここはずっと春の気候だ。
それに俺には、心に誓った大切な人が
いるんだよ。早くカナップに行きたいのに…。」
「プーちゃんバイト代はずんであげてるじゃん。
あと、2件お買い物付き合ってよ。
今日みたいに襲われて、私は怖かったよ。
可愛い子も拾っちゃったけどね。」
「……カナップ。」
僕は反応してしまった。
「おっ、カナップに行きたいのか?」
あっ、味方か敵かまだわからないのに……。
「し、知り合いが居るかも知れないので…。」
「そうか、コイツの用事が終われば一緒に
行こうか。2軒、あと2日後位になるがな。」
「わあ、ぷーちゃんも可愛い子も、
いなくなるなんて寂しい。」
「ハイハイ」
「私もいく。カナップは今当主の息子が
ご成婚されて町一色お祭りモードらしい。
おいしい食べ物が……。」
「シューちゃん、ヨダレ。」
プーちゃん、シューちゃん2人の関係は
何だろう?仲良いからって恋人じゃなさそうだし
友達にしては、気安い。
「おっ?俺たちの仲が気になるか?」
「……。」
心がよめるの?
「心はよめないが、顔にでてるよ。」
「……。」
クックックッと笑いながら説明してくれた。
身分差はあるが、同じ歳で領土を抜け出して
よく遊んだ悪友。ある意味、幼なじみらしい。
「マコトさんが、目覚めてからお返事
していいですか?」
「マコトが主なのか?」
「……。」
「訳ありってやつか。安心しろ。
今度は俺が守ってやるよ。おチビさん。」
キオナ16歳、
身長167㎝、童顔でよく子どもに
間違えられるピュアな性格だった。
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