第38話


危うく……。

ガチャ、バーン。

ゴゴッ。


ド、ドアが…。

ヒューゴさんのお母様、ママ2人が

勢いよく現れた。運悪くドア付近で

話していた俺たち(ヒューゴさんはドア側)に

ぶち当たってしまいました。


ドアが壊れる勢いでヒューゴさんの部屋に

現れたママ達はなぜか泣いていた。

ヒューゴさんは、俺を庇ったせいで

一瞬気を失った気がしたが

後頭部をさすりながすぐに立ち上がっていた。

さすがギルドマスター?

身体を鍛えてるだけあるなあって思ったのは

つかの間、血、血が出てる……。

頭から血が出てるしあまりにもヒューゴさんが

かわいそうになり、すぐにでも

駆け寄り治癒をかけようとした。

結果、出来ませんでした。


正確にはママ達に、阻止…ゴホッ。ゴホッ。

抱き締められたので、駆け寄ることが

出来ませんでした。

俺はママ達に抱きしめられながらも

ヒューゴさんに届く様に、こっそり

治癒魔法を送った。

一瞬、驚いた表情のヒューゴさん、

血が止まったみたいで良かった。


「さすが、カナップ家の嫁だわ。」

「完璧だわ。ダメ男をもちゃんとリード

しながら叱る。素晴らしいわ。」

「それにしても、情けない。んもぉ~

ヒューゴはお父様譲りね。」

「そうね、顔は私達のように、美しく

可愛いけど、性格がねぇ~。」

「「……。」」

「やっぱ中身もちゃんと男じゃないと

やっていけないわよ。」

「やっぱり鍛え直しましょうか?キャサリー。」

「「…!!」」

「そうね、それがいいのかもね。スキーナ。」

「あっ、ま、待って下さい、ママ達。」

「いゃ~ん可愛い。待つわ、いつまでも待つわ。」

「うわ~、可愛すぎるぅ。いつまでも待てるわ。」

「あ、ありがとうございます。キャサリーママ、

スキーナママ。えーっと。あれ?

ご、ごめんなさい……。」

「キャサリーママって呼んでくれたわぁ。」

「わ、私もスキーナママって呼んでくれたわぁ。」

「「いやーん、困った顔も可愛いわ。」」

「……。」

なぜ止めてしまったのかさえ、忘れて

しまいそうになって焦ってしまった。


色々ツッコミたいママ達の会話だったけど、

ピアスの事、はずし方の事が気になった。

なぜあんな言葉だったんだろう。

「キャサリーママ、スキーナママ。

ごめんなさい。まだ、ヒューゴさ…

ヒューゴに聞きたい事があるんですけど…。」

「「わかったわ。話しなさい。」」

「ありがとうございます。」

俺はママ達に頭を下げてヒューゴに

向き合った。

「あ、あのさ。さっきの事なんだけど……。」

「お、おぅ。何でも答えるぜ。」

「チャベツが何なのかっていうのと、その、

ピアスのはずしかたって何なんだ?」

「ハ、ハル……。」

「「……。」」

また、やってしまったのか?

座っていたヒューゴはうなだれ

床に倒れ込むように泣いていた。

ママ達は、涙が出てきたのか

レースのハンカチをゴツい手で

亜空間から取り出し、亜空間から

何かがこぼれ落ちた。

ボイスレコーダー?の大きい版?

細長い四角い箱に魔石がはめ込まれていた。


かちゃ。

落ちた瞬間スイッチが入った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ザーザーっ


「いちいちキスのやりかたとか意味ある行為は、

全然わかんねーよ。俺はここの暮らしの

常識わかんねーから、いちいち言葉で

示してくれよ。だから…。」

スーハー。

「俺はヒューゴがそのへんのヒューゴでも、

情け無いヒューゴも、仕事モードの

かっこいいヒューゴも好きなんだよ。

あんただから、好きなんだよ、くそっ。

愛してんだよー。愛してるから、

一から百以上まで説明しながら、

俺を愛しやがれ。俺も愛してやるから

ちゃんと愛しかえせよ。」

「ハ、ハル……。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「「……。」」

「あらあら、まあまあ嫌だわっ。

落としちゃったわ。オホホホ。」

「あらぁまぁ、大変ね。音声保存用の、

ボイスボックスだわ。」

「あっ、そうだわ。」

ママ達はお互いに目配せをしていた。

「ヒューゴ、ハルトちゃんもうすぐ

夕ご飯だから、また後でね。」

「ヒューゴ、はいコレ。夕ご飯

早めに来なさいね。」

「待ってるわ。しっかり話しなさいね。」

「先にいってるわね。」

「じゃあ、また、」


ガタッ。

外れかけたドアは悲鳴をあげながら

ずれたまま閉められた。

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