前書き

前書き

　よう。俺。

　マスターベーションは楽しかったかい。いつも見ているav女優と画面越しに会えてさぞ嬉しかっただろう。夜寝る前の楽しみだものな。

　寝れないことを言い訳にして、ベットのそばに置いてある携帯を手に取り、気になったことを全て調べ尽くし、av女優に挨拶をして、ティッシュの中に子種を放り出す。中学校からの習慣だろ。やめられないよな。

　ああそういえば。昨日は何を買ったんだい。履きもしない靴かい？すでに数着持っているシャツかい？それともおしゃれな雑誌に載っている北欧インテリアか？

　いい加減目を覚ましたらどうだ？

　マスターベーションをしても、高額なものを購入しても何の意味も持たない。好きな女とセックスできるわけでもなく、なりたい自分になれるわけでもない。

　もっと表現力を磨いたらどうだ？本当は何を望んでいるんだ？時間はどんどんと進んでいる。全部わかっているんだろ。自分のやっていることが何にも解決しないことを。解決策なんて自分で見つけるしかない。

　カッコ良くなんて生きてはいけない。そして生きられない。淘汰されないためには、常に泥臭く、一途に、シンプルな暮らしでなければならない。何者にも支配されるな。己を支配するのは己自身でなければならない。

　誰かに勧められたことをやるだけの機械と化してしまうくらいなら、グリーンデイのライブを見に来ている女の乳にかぶりついて逮捕される方がマシだろ。もっとも、その女は乗り気になってくれるだろうが。

　名言を口にするな。自分の思いを誰にも気づかれるな。思いを自分の内側の最も深い部分に閉じ込めておけ。大切なことは自分にも曝け出してはいけない。あまりにも危険すぎる。弱っちいお前は、凶暴な世界と自分に飲み込まれてしまうだろう。気をつけることだ。

　魅力的な人間になるには自分の考えでのみ行動することだ。他人の意見などが垣間見る隙間など一つもあってはならない。他人に口出しされたことなどほっとけば良いのだ。説教されてもヘラヘラしておけ。つまらない人間にはつまらない態度を取ってあげるのがセオリーである。その代わり、自分に対しては真剣に向き合わなければならない。

　自分とは、積極的な自分と消極的な自分で構成されている。消極的な自分に対しては向き合わなくて良い。消極的な自分は肯定しても意味がないのだから。ただの自慰行為に過ぎない。何の面白味もないのである。退屈している人間にはなるべきではない。積極的な自分と向き合うのが良い。

　世の中には面白いことばかりである。とりわけ人間は面白い。面白い人間の面白い部分を、殊に取り上げるのだ。自分なりの解釈をもて。