JKに転生した魔王 。明日、勇者とデートします

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

魔王、JKに転生

 魔王ブランと勇者が、共倒れして数百年。




 世界から恐れられた魔王ブランは、地球のJKに転生していた。



 今は力を失い、人間として生活する身である。




 郊外のワンルームに居を構え、平和を満喫していたあるとき、事件は起きた。



 



「側近よ! 側近リキュールはおるか!」



 一大事が発生し、魔王は側近のリキュールに声をかける。



 



 側近は、JCとして転生していた。魔王の妹というポジションである。



 リキュールはソファに寝転んで漫才を見ていた。魔王ブランの一大事だというのに。




「なんスか」



「果たし状が来た!」




 ブランは、スマホを側近に見せた。




 寝転んだまま、側近はブランのスマホを受け取って、画面に出ている文面に目を通す。




「ワシにも読ませい、リキュールよ」



 トラネコに転生した魔獣モヒートも、スマホ画面を眺めた。



「獣くせえから顔は近づけないでくださいね、モヒート」



 モヒートは、ソファーとリキュールとのスキマに入り込む。



 



「えーっと、なになに『明日の午後10時、二人でお出かけしませんか? 楽しみにしています』とな」




「うわー、モヒート! 声に出して読むでない!」



「申しわけございません魔王ブランサマ」



 魔獣モヒートが粗相を詫びる。




「して側近よ、この文面、どう読み取る」



「デートの約束ッスね」



 しれっと、側近は解説した。




 だが、魔王は信用しない。



「左様か? 決闘の日時を知らせる報告では?」





「まあ、決闘ちゃあ決闘かな、と思いますが?」



「なるほど。つまり、勇者を倒し、魔王ブラン復活の時期は近いと申すのだな?」




「そう思ってたらいいんじゃないッスか?」



 面倒くさそうに、リキュールは告げる。



 



「やはりそうか!」



 ブランは拳を握り、天に向かって突き上げた。



 



「ついにこの時が来たのだ。世を忍ぶ仮の姿として力を蓄え、高校に進学したかと思えば、まさか同級生として勇者と邂逅してしまうとは!」



「運命ッスよね」




 しかも、勇者もこちらをブランと認識していた。




「ショタって言うのも、ポイント高いッスね」



 リキュールの趣味は分かりかねる。




 ブランとしては、元のガッチリした姿も男らしくて好感が持てたが。



 



 思えば、これまで色々な作戦を講じた。




 油断させて、手作り弁当を食わせる。ロッカーに文を隠す。昨日など、教科書まで貸した。



 おそらく、勇者はこの魔王ブランが無害だと思っているに違いない。




「おのれ勇者のヤツめ、デートのお約束など百年早いわい! このベヒーモスのモヒートめが鉄槌を喰らわしてくれる!」



「あんた、お隣のミーちゃんとヨロシクやってたじゃないッスか」





「あれは、みなぎる野生がそうさせたのであって、魔族としてのホコリを忘れたわけではないわい!」


 リキュールのツッコミに、モヒートが反論した。




 



「魔獣の色恋沙汰などどうでもよい! それより、決戦に向けて、吾輩はすっかり寝付けなくなってしもうた! 準備に取りかかる!」




 現在午後9時である。よい子は寝る時間だ。



 これまでブランも、人間の習わしを忠実に守っていた。



 しかし今、ブランは目が冴えてしまっている。



 



「明日着ていく装備を用意せい!」



「かしこまー」




 ブランはリキュールに指示を出し、明日着る洋服を用意させた。

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