男 ー1ー
なんだこりゃ、酒じゃねえな。
くそ、なんてぇ臭いだ。
鼻がどうにかなっちまう。
せっかくの酔いが醒めてしまうわ。
なぜにこんやもん寄越しやがる。
なんだ、これ以上呑めば身体を壊すとな。
酒場の主人が何を言う。
別にお前には関係ない。
金はあるんだ、さっさと寄越せ。
そうだな……、飛び切り強いやつがいい。
酒に溺れて息絶えそうな程に強いやつがな。
なに、どうせ溺れるなら女にしろだと?
ふん、こんな場末の宿に溺れるような上等な女など……、いやまて、あの娘は?
ほら、あそこにいる髪を高く結った娘だ。
こんな宿には珍しい。
随分育ちの良さそうな娘だぞ。
真白い肌に絹の如き双鬢、簪の楔石が娘の歩みに合わせるようにゆらりゆらりと揺れておる。
うん、どの女のことか、だと?
あんなに目立っているではないか。
お前、まさか私より呑んでいるとでも言い出すつもりではあるまいな。
女衒のくせに自分の商売道具すら分かっておらぬのか。
まあいい、酒はやめだ。
部屋を借りるぞ。
さあ娘、こっちに来い。
金はもう支払い済みだ。
こんな顔でどんな風に男を蕩かせるのか、その手管を見せてもらおうか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます