第122話 ついさっきまで

さっきまで彼は生きていた

目は閉じたままで喋れない

まるで昨日までの君と僕

つまり彼は生きていた


楽しかったことをいくら思い出そうとしても

苦しそうに歪めた顔だけが目に浮かぶ

たくさんあったはずなのに


さっきまで彼は生きていた

遠くの声もよく聞こえる

誰もが忙しく通り過ぎる

確かに彼は生きていた


ゆっくり同じところをさすり続けてみても

触ったとたんに冷たくなっていく

わからないものにかわっていく


さっきまで彼は生きていた

目は閉じたままで喋れない

まるで昨日までの君と僕

つまり彼は生きていた


同じところに留まって進みたくない

認めて受け入れて乗り越えたくない

ああそれはとても困難で 困難で

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