第110話 チューリップ

年老いた防空壕の奥に見つけた緑の扉

薄闇に慣れた目を何度も何度もこすりながら

誘われるようにそっと静かに近寄って押し開く

淀んだ空気の柔らかな衣をまとったからだ

赴くままに走り出して行き止まりの奥に見つけた

こちらを見つめる黒いチューリップ


はじめましてこんにちは

それでお元気いかがですか

上手く言えないけれど

こうなるような気はしていたよ

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