第65話どうしてできると思ったの?

久々でごめんね

テスト終わったから再開します


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「さて、屋敷に来ましたけれど」


そこそこ豪邸の――大きさでいえばクリスティンのレスト家にある私邸ぐらいなので普通であればかなり大きいが――にやってきたクリスティン、ジャン、ルールーリア、アランドルの四人は、屋敷の全体を見回す。

仕事があるにも関わらずジャンがここにいるのは、ウィルフルからじゃあお前は明日別件で外に仕事があることにすればいいだろう、休みではないから気負うなと放り出されたからだ。

国王の職権乱用もいいところである。


「本当に必要最低限のものしかないね……」


「私の屋敷と言っても使うことがなかったからな……財産として持っていて、たまに手入れする程度で……」


庭はぐちゃぐちゃという程ではないがとても見れたものでは無いし、蔦は建物に絡んでいるし、蜘蛛の巣なんかはないが家具は埃だらけだ。

かなり悲惨な状況のエントランスを見て四人は大きくため息をついた。


「それに使用人も一人もいないのよ、あの四人とアランドルお兄様のところの使用人三人を合わせてもたったの七人だわ」


「今からこれを私たちだけで片付けるなんて無理がありますよ……」


何しろクリスティンとアランドルは生粋の公爵家育ち。

そもそも掃除なんてする必要が無い。

ルールーリアは鳥だし、ジャンもここのところ数年は公爵家の人間として生きてきた。

なぜ自分たちだけで片付けられると思ったのか不思議なぐらいだ。

と、そこに。

明かりもついていない暗いその場に、突然光が差し込んだ。


「話は聞かせてもらいましたよ!」


外の溢れる太陽の光だ。

それを背後に、光の使者ロゼッタ・モートレックが満面の笑みで立っていた。


「まあロゼッタ! 一体どうしてここに?」


突然現れた彼女に驚いてクリスティンが声をかける。


「オーロラたちのところに遊びに行こうと思ったのよ。でも留守にしてるって言うじゃない。どこに行ったか聞いたらお屋敷に行ったって言うから急いでこっちに来たのよ」


「そうだったのね!」


彼らは心から安堵した。

それはもう、かつてない程に。

だって彼女がいればもう何も心配ないのだから。


「それで、このお屋敷を綺麗にしたらいいんでしょう? 任せて! みんなでやればきっとすぐに終わるわ!」


これは頼もしい味方が現れたな、と、アランドルはふわりと笑った。



「さあ、じゃあまずエントランスを綺麗にしちゃいましょう。オーロラとルールーリアは、これで置物や棚、色んなものの埃を綺麗にふき取ってね。セルリオールとベルナンデスは私と敷物を洗いに行くわよ」


てきぱきと指示をして、ロゼッタは敷物を巻き始める。

その様子をじっと見ていた男子陣二人は、突然彼女にきっと睨まれた。


「ちょっとあなた達、洗いに行くって言ってるでしょ。手伝いなさいよ。重いのよ」


「あ、ああ」


クリスティン達は楽しそうに埃を拭き取っているのに、彼らは順応性がない。


思ったより重かった絨毯を持って外に出た三人、のうちのアランドルとジャンは、汚れのついた自分の手をはたきながらため息を付いた。


「絨毯がこんなに重いものなんて知らなかったよ……」


「確かに重かったがそこまででもないだろう。貴様が貧弱なだけだ」


「何言ってるのよ。重くて当然よ、どうせセルリオールったら公爵家の屋敷だからって使いもしないここにとんでもなくいい絨毯を敷いたんでしょ」


おおっとここで貧乏伯爵家の出のロゼッタ参入だ。

確かに一度も使ったことのない屋敷のくせに、あまりにも調度品が高級すぎる。


「文句言ってないではやく水汲みに行きましょ。さもないと前公爵様が歩かれたそばから埃が立つわ」


「それはかなりまずいな……」


ロゼッタの方が身分が上なせいで逆らえない二人は渋々彼女について歩いて行っていった。

なにせちゃんとした機能を持った神と神から生まれた神の子。

変なことを言えるわけがないし、前公爵が歩いて埃が舞うのも絶対に許されないので、大人しく自分たちで綺麗にするしかないのだ。

つくづく思うがどうして、どうして良家の出の人間ばかりのくせに屋敷の掃除ができると思ったのか。


――――――――――――――――――


唐突にやってくるのがロゼッタ。

次の更新予定日は十二月十二日です。

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