第22話家出(もとい宴会)
「きゃー!そこ、そこよ!あーもう、ずれたじゃなーい!」
「あはは、そこじゃないってww」
闇の森の王城。
そこでは、家出してきたクリスティンを囲んで神々が宴会を開いていた。
なぜに。
「オーロラちゃんもう結婚してるのにお父さん頭が固いのねえ」
「あの自称世界一美しい王子みたあ?何やってるんでしょうね~」
デュオニュソスの宴会並みの規模である。
解せぬ。
「お父様ひどいです!許してくれたっていいじゃないですかぁっ!」
「そうねえ。前公爵、大好きなあなたに大っ嫌いって言われてへこんでたわよお(笑)」
「さすがに認めてくれるんじゃない?」
「そうですね!」
クリスティンはめいっぱい、宴会を楽しんでいた。
そのころ公爵家では、謎の会議が開かれていた。
「大旦那様、お認めになられてはどうですか?」
「いやだがしかしなあ……」
正確には、一部始終を見ていた侍女と前公爵の会話である。
「何がお嫌なんですか。セルヴィール家の次男といっても兄君のような方ではありませんし、仕事もよくできて国王陛下のお気に入りなのだと聞きましたよ?」
「わかってるんだ。バジル・セルヴィールがほかのセルヴィール家の者と違うのは。だがなあ……」
前公爵の言う通り、バジルは普通のセルヴィール家の者とは少し違う。
平等に誰にでも噛み付くし、むしろ親族に冷たくほぼ無視である。
仕事は早く、出来はすべてが完璧。
アランドルとレンといれば、並の人間の何十倍もの速さで仕事が終わる。
国王ウィルフルの覚えもめでたく(まあ当たり前なのだが)、公爵家の次男ということでクリスティンに釣り合わないなんてこともない。
再び前公爵の脳裏に、クリスティンの声がよみがえった。
「お父様なんて大っ嫌い」。
人生で初めていわれた言葉である。
今まであんなにかわいがっていたのに、たったこれだけのことで一生嫌われるのは嫌だ。
前公爵が頭を抱える。
「はあ…… ……お前の言う通りかもしれないね。セルヴィール家の者だというだけでバジル・セルヴィールを評価するのは違うのかもしれない」
「そうですよ。お嬢様の選んだ方です。悪い方のはずがないです」
前公爵は一息つくと、にっこり微笑んだ。
「あ……」
クリスティンが、何かを思い出したように声を上げた。
「よく考えたら、セルヴィール公爵にも認めてもらわないと……」
「あー、父上の存在を忘れていた……」
いまさらそんなことに気が付いた二人。
レスト前公爵の次はセルヴィール公爵を説得しなければならないのである。
セルヴィール公爵のほうがもっと、説得するのは難しいだろう。
「父上を説得できたとしても
うーん……
再び頭を抱える二人だった。
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