第10話 王女様の一目惚れ 前編

「へ? なんですって ?お母様どういうこと?」


リズル王国第一王女、リェーデ・プラリネ。

王妃の話を聞いた彼女は王女らしくない声を上げた。


「リェーデ、そんな姫らしくない反応はおやめなさい。何がへ?ですか。」


「でも、でも……」


信じられないといった様子で彼女は言う。


「なんなの?」


「いきなりセンラ王国の王子と結婚だなんて聞いてないわ! わたくしは認めません!会ったこともほとんどないのよ!」


隣国、センラ王国。

リズル王国と同じく大国である。

だが彼女は、一度もセンラ王国の王子と会ったことがなかった。


「淑女らしくないわ、リェーデ。もうすぐでおつきだそうよ。準備なさい」


「なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」




「ようこそリズル王国へ、我が友よ」


「ようこそおいで下さいました。センラ王国からはるばるお越しいただいて嬉しいですわ」


「…………ようこそおいで下さいましたっ」


国王と王妃が笑顔で王子たちを迎える中、リェーデは不機嫌そうにツンとした態度でそう言った。


「若者はあっちで話しておいで。リェーデ」


「……はい、お父様……」


不満そうな顔でリェーデは返事をすると、王子を連れて別の場所へ移動した。


「改めて。今日は会えて嬉しいですリェーデ姫。私の名前はリュール·イラトル。センラ王国の第1王子です」


にっこりと笑いながら、リュールは言った。


「リェーデ·プラリネと申しますわ。いきなり結婚だなんてどうかしています。お考え直しくださいませ」


だが彼女はツンとしたままである。

目も合わせずリェーデは言い放った。

だが、そんな簡単に彼が諦めるはずがない。


「……そんなこと言わないでください。確かにいきなりですけど……。小さい頃にあなたを見て一目惚れしたんです! 今もとても美しいし」


リェーデはリュールを見たことがない。

なのにリュールはリェーデを見たことがあると言っている。

なぜ。

だが、リェーデにとってそんな事はどうでもよかった。


(美しいですって? 確かによく言われるけれど、私はそれでもディアネス国王の聖妃に勝てなかったのよ。ふざけてるとしか思えな…………!?)


「どうかされましたか?」


ちらりとリュールのほうを見たリェーデは言葉を失った。

彼女の目の前にいるセンラ王国の第一王子は、それはそれは美男子だったからである。

再び彼から視線を外すと、彼女は言った。


「…………結婚、認めて差し上げても良くてよ………」


……たぶん、彼女はツンデレである。



「え? リェーデ姫、ご結婚なさるんですか?」


いきなり告げられた事実に、彼女は驚きの声を上げた。


「そうみたいだね。なんか、センラ王国のリュール王子の所に嫁入りするらしいよ」


「そうなんですか。私達も結婚式典いかないとダメですね」


予定を確認しながら、彼女は言った。


「それがあったか。めんどくさい…………」


「陛下、面倒くさがるのはやめましょう」


ウィルフルは速攻で注意された。


「はーい」


「いつ出発ですか?」


「うーん、明後日かな」


「じゃあ準備しておきますね」


明後日出発すると、リズル王国につくのは2日後。

式典はその3日後である。


「陛下〜、正装の他になにか入りますか?」


ドレスの置いてあるクローゼットを眺めながら、彼女は聞いた。


「んー、一応いつもの服も持っといてー」


書類を眺めながら、彼が答える。


「はーい。リェーデ姫、お幸せになれるといいですね」


「そうだね。ついこの間まで僕の妃の座を狙ってたのにね」


ウィルフルが苦笑いをしながら言った。


「もう忘れてあげてください」


「ごめんごめん」


そのあとも色々話をしながら、二人は午後を過ごした。

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