第29話

 ファレイアがヘルヴィウムに詰め寄っている。


「なんで、双方向の貫通にしないんだよ!?」

「ですから、さっきも言いましたが、ワープ職人によるワープでないのです。安全確認をしなければいけませんから!」

「じゃあ、ヘルヴィウム。お前、さっきどこからワープしたんだ?」


 フェレイアが、黒ワープを一瞥した。


「黒の異世界マスターが、ゲートを使わずワープを使用した。ちゃーんと、安全は確認できたんじゃねえか?」

「使用安全は、天照大神様がなさるでしょう。私一人の確認で、新たな創造の仕組みで作られたワープを、安全だと宣言などできません」


 押し問答が続く中、黒のワープが光る。


「あれ、まだ老村は盛況なんだ?」


 クライムが軽妙に現れた。


「ファレイア町長!」


 クライムが、ファレイアに満面の笑みで言った。


「ああん!?」

「登がそう言ってたからさ。『ファレイアの町並み』に二人で行ってきてたんだ」


 ファレイアの目が見開く。


「な、なんで俺の?」

「え? だって面出せってファレイア町長が言ってたじゃん」


 クライムがサラリと返す。


「町長でじゃねえ!」


 ヘルヴィウムからクライムに、ファレイアの気が逸れた。

 その間に、次々に異世界マスターらがゲートを開く。

 登を捜すために、『ファレイアの町並み』に向かったのだ。


「ああ、やっと混雑解消です」


 ヘルヴィウムが言った。

 ファレイアが舌打ちして、ゲートを開く。


「てめえら、覚えてやがれ!」


 どこぞの悪役ですか? と聞きたくなるような台詞だ。

 ファレイアが老村から消えた。


「で、登は?」


 ヘルヴィウムがクライムに問う。


「連れ去られた。それを伝えに来たわけ」


 ヘルヴィウムがすぐにゲートを開く。

 そして、クライムと一緒にゲートを潜った。




 登は、クライムが購入した切符で黒ワープに一歩踏み出そうかというところで、真っ黒な仮面を被った七人に取り囲まれた。

 クライムの顔色が変わる。


「バグ」


 クライムが言った。

 登は首を傾げてクライムを見る。


「登! ワープしろっ……グッ」


 仮面の者が、クライムを制するように手を上げる。

 クライムがグッと唇を結んだ。いや、強制的に閉じられたようだ。

 クライムの瞳が、必死に何かを訴えている。


「着いて参れ」


 登は有無を言わさぬ圧を感じた。天照大神とはまた違った圧である。

 七人の仮面の者が、同時にゲートを開いた。

 頭上に七つの光る輪が現れる。

 それが、徐々に重なっていき、まばゆい光を放つ。

 クライムを残し、登はゲートを潜るしか選択はなかった。体はクライムのように強制的に動かなくなっていたからだ。




 真っ白なのか、透明か、無の世界に七人と登は浮かんでいた。


「ようこそ、『無世界』へ」


 七人がいっせいに仮面を外した。

 登は、同じ顔に驚愕する。


「ヘル、ヴィウム?」


 七人ともヘルヴィウムなのだ。

 登は七人のヘルヴィウムに鋭い視線を向けた。肌感がヘルヴィウムではないと告げている。


「変化か」


 この異世界で、姿形を変えられるアイテム『変化の種』だ。


「『真実の瞳』持ちか」


 ヘルヴィウム擬きの一人が言った。

 その瞬間、タブレットが振動する。

 だが、登は七人から視線を外さない。

 ヘルヴィウム擬きの一人がタブレットを確認し、登にタブレットを見せる。


「情報が更新されたぞ。『未石召還』の次に『真実の瞳』が追加された」



【新異世界マスター情報】

山田登。黒所属。(ヘルヴィウム担当)

-メイン世界-

『世界はたくさんの想いでできている』

-二つ名-

天照大神命名、陽の者。

-召還-

青龍の鍵。(依り石・タンザナイト)

白龍の輪。(未石) 麒麟の導き。(未石) 天照の輝き。(未石)

-スキル-

神獣使い。未石召還。真実の瞳。

*随時更新予定

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