#2 幻想世界へご招待
東京オリンピックまで残り数ヶ月の夏。
俺、
貧乏探偵にとってエアコンは高嶺の花なので、窓と扉を全開にして凌ぐ日々。
残り少ないタバコの誘惑と戦っていると、物音が聞こえた。
本棚から一冊の古ぼけた皮表紙の本が落ち一人でに震え出す。
俺は急いで帽子とコートを手に取り、タバコをポケットに突っ込んだところで本が開いた。
ページから溢れる光に吸い込まれ、窓と扉を開けたまま俺は別世界に飛ばされた。
光から弾き飛ばされ、顔から落ちる。
何度も体験してるが、この方法に慣れることはないだろう。
起き上がろうとすると、扉が開く音がして激しい足音が聞こえてきた。
「陛下。今の音は何事ですか⁉︎ 貴様何者だ!」
心臓を貫かれる前に、女性の声がそれを制する。
「おやめなさいエケストリス。彼は侵入者ではありませんよ」
落ち着いた威厳溢れる声の持ち主は、長く美しいプラチナブロンドの髪を持つエルフの女王。その名は……。
「どうもコリル女王。相変わらず手荒い歓迎で」
「お気に召してくれて嬉しいですわ。タンテイさん」
彼女に皮肉は通じなかった。
「用件を聞く前に、彼に言ってくれませんか?」
俺はエケストリスを親指で指す。
「近衛隊長。彼は怪しい物ではありません。武器を下ろしなさい」
「何度も会ってるのに俺の事忘れたのかよ」
向けられた矢に構わず、顔を近づける。
エケストリスはしばらく考えた様子で弓を下ろした。
「……すまないタンテイ。昨日起きた事件で気が立っていたんだ。許してくれ」
「そうか」
「私はタンテイさんに昨日の話をします。貴方も見た事を彼に」
エケストリスは「分かりました」と言って後ろに下がった。
「んで女王。今日は何の用だい。まさかまた鍛冶屋の
それを思い出してコリル女王の表情が緩むが、すぐ厳しいものに変わった。
「違います。実は昨夜……命を狙われたのです」
予想以上に大変な事態が起きたようだ。
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