幻想探偵幻恭一郎〜僕のおじいちゃんは幻想世界の探偵さんです〜

七乃はふと

#1 出歩けない夏

「何で会いに行っちゃいけないの!」


 二〇二〇年。小学校最後の夏休み。毎年僕はおじいちゃんの別荘に遊びに行っていた。


 けれども今年は、ウィルスのせいで学校だけでなく別荘に行く事もできない。


 そんな時、母さんがタブレット端末を渡してくれた。


 画面におじいちゃんが映る。


スグル。久しぶりだな元気してるか?』


 おじいちゃんは去年会った時と変わらず元気そうで愛用のパイプを持っていた。


「元気だけど、おじいちゃんに会えなくてつまんない」


『じいちゃんはこうして顔が見れただけでも嬉しいよ』


「ねえおじいちゃん。またお話聞かせてよ」


『じいちゃんの昔話かい?』


 僕は、おじいちゃんの昔話が大好きなんだ。


『そうじゃなぁ。じゃあ今回はエルフの国で起きた事件を話そう。ちょっと待っててくれ』


 画面から消えたおじいちゃんが戻ってくると、左手に古ぼけた皮表紙の本を宝物のように抱えていた。


『あれは今から五十年以上前の事じゃ……』


 おじいちゃんの語る物語に僕はすぐに引き込まれていった。

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