第1883話 世界の崩壊までのカウントダウン
大魔王ソフィが現在居る場所は、煌阿やシゲン達の居る地上からは見上げる形となる空の上であるが、その更に遥か高度を上げた場所に、力の魔神はソフィを見下ろす形で存在している。
魔神がその場所に居る意味とは、ソフィの攻撃から世界そのものを守る為の『結界』を張る事にある。
単に一度だけソフィの攻撃を防ぐ事だけならば、ここまで空高く上がる必要性はないのだが、すでに魔神は何度も繰り返されるであろう攻撃に対して、自身の『結界』がそう何度も耐えられるとは考えておらず、逐一破壊された箇所の綻びを修正して、再度次の攻撃に備える為の『結界』を張り直さねばならないと理解しているのである。
つまり観測が行える範囲を広げる為に、ソフィ達の居る場所より更に高い場所を選んだのであった。
しかし問題があるとすれば、これはあくまで何度も防ぎきる事を前提とした方法だという事である。
過去にも同じ相手であるソフィに対して当時の執行者であった力の魔神は、何度もそのソフィの攻撃を『固有結界』を用いて再生と修正を繰り返しながら防ぎきって見せた事があったが、それはあくまでソフィが三割程の力しか開放していなかったからに他ならない。
今回のソフィは、明確に
流石に『結界』の耐久性には自信のある力の魔神であっても、何処まで耐えられるかが未知数というのが本音であった。
本来は相手の攻撃を完全に防ぐ事を目的とした、天上界でも耐久性を誇る力の魔神の『結界』なのだが、すでに三割の開放状態であった過去のソフィが相手でさえ、如何に早く『結界』の修正を行いながら耐えられるかという前提条件に変わっていた程であり、さらに今回のソフィが相手では、その修正を行える程に『結界』の耐久が持つかどうかすらも怪しい状態なのだ。
当然に力の魔神の張る『結界』の耐久性を大きく上回る攻撃であった場合、いくら『結界』を再生し直したところで、その再生を終える頃には世界が滅亡し終わっている可能性だってあるのだ。
そこまでの威力は流石に力の魔神でさえ想定出来ていないが、もし七割程まで開放した今のソフィがその威力に達していた場合、もう力の魔神では守りきる事は出来ず、この世界は壊滅状況となり、確実にこの世界に新たな執行者が生まれ出てきて、大魔王ソフィを消滅させようとする動きを見せるだろう。
あくまで力の魔神は、このソフィの『絶殲』を自身の『固有結界』を伴った『結界』で、ソフィの攻撃の初撃に対して再生を間に合わせるだけに留めなくてはならない。
…………
――魔神域魔法、『
そして口角を吊り上げながら笑うソフィによって、その問題である『魔法』が放たれた。
真っ白い無機物な空間に、更にソフィの『真っ白な光の束』が重なり合っていく。そして音を完全に置き去りにして、衝撃だけが妖魔山中を駆け抜けた。
しかしその攻撃によっての甚大な被害影響だけは外に出す事はなかった。何とか力の魔神が見事に『結界』で防いでみせたのである。
遅れて硝子が割れるような音がこの場に響き渡る頃、幾度となく『結界』が割られながらもコンマ数秒で再生を繰り返しながら、やがて
どうやら『今』のソフィの攻撃は、力の魔神の張る『結界』で初撃を受けきる事を可能としたようであった。
――つまりこの初撃を防ぐ事が出来なくなった時こそが、この世界が崩壊する時となるであろう。
いくら力の魔神の再生がコンマ数秒単位で復元を可能と出来たのだとしても、その初撃を受けきれなければ『結界外』にダメージがいってしまうからである。
そして空の遥か上で力の魔神が歪つに表情を歪めながらも、何とか防げた事に安堵していると、その表情が
その力の魔神が見下ろす目が、大魔王ソフィの嬉しそうに笑うところを捉えたからである。
――やがて大魔王ソフィは何も言わないまま、両手を左右に広げ始めた。
この光景はかつて力の魔神もサカダイの町で見た事があった。
それは数十体の魔神級の存在が一斉に攻撃を放った時に、 『
力の魔神はその時の事を思い出して、更なる絶望に愕然とする。
このソフィの七割の開放状態でのたった一発の『
――しかしそれでも自分がやらなければならない。力の魔神はそう決意を込めた目すると、完全に世界を覆い尽くす程に『固有結界』の範囲を広げた。
やはり彼女の思惑通りにソフィは複数の『
このいくつもの出現を果たしていく『真っ白い光の束』のたった一つでさえ、あれほどに再生を必要としたというのに、今度はその
力の魔神も防ぐ為の『結界』の準備を終えてはいるが、内心では防ぐ事は叶わないだろうとばかりに、この後に起こる展開を考え始める。
まだ力の魔神にも『天上界』から執行者が出現を始める気配は感じられてはいないが、こちらも天上界の陰では
きっと力の魔神の『結界』が破壊されたと同時に、 『天上界』から一斉に執行者たちがこの場に集い始めるだろう。
すでに魔神は過去に、ソフィと共に天上界の襲撃に立ち向かおうという覚悟と意志を持ったが、それでもその時が実際に近づけば、やはり何とかしなければという考えを意識せざるを得なかったようだ。
――きっとソフィより先に自分が消滅させられるだろう。
そしてそうなれば、もう私は二度とソフィとは会えなくなる。
その考えが魔神の頭を過った時、彼女は全身に震えが走るのだった。
……
……
……
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