第1773話 調査を成功させる事に確信を持つ者
天狗族の最後の生き残りであった『帝楽智』を葬ったソフィは、ゆっくりと空から地上へと降り立つ。
誰もが言葉を失いながらソフィに視線を送っていたが、一番最初にソフィの元へと向かったのはやはり『力の魔神』であった。
「――」(お疲れ様、ソフィ! 見事だったわよ!)
魔神は恍惚とした表情を見せながらソフィにそう告げた。
「ああ……。ひとまずはこれで動忍鬼やイバキ殿、それに集落に居た者達に危害は及ばないだろう」
ソフィが魔神にそう告げていると、大魔王ヌーがテアを連れ立ってソフィの元に歩いてくるのだった。
「あの女天狗を葬ったところまでは理解出来たが、最後のてめぇの『
「
淡々とヌーの疑問に答えてはくれたソフィだが、その彼の普段とは違う冷酷な目を見れば、
「そ、そうかよ……!」
他にもヌーはソフィから色々と直接戦った『女天狗』や『華親』の事を聞き出そうと考えてはいたが、今のソフィの目を見てしまった後ではそれも難しいと判断した大魔王ヌーであった。
――あまりにも今の
確かに仲間や友人を傷つけられたりすれば、今回のような怒りを大魔王ソフィは見せてはきたが、何処か今回はそれだけではないように感じられたのである。
(今のコイツと喋ってたら、息が詰まるっていうどころの話じゃねぇ。こんな恐ろしい目をされたままのソフィと平然と会話を続けられる野郎なんて、
大魔王ヌーが抱いた恐れは当然のように、この場にヌーと共に居たテアにも伝わっていたようで、ちらりとヌーがテアを見下ろすと、彼女は一切ソフィと視線を合わせる事なく、ただ何もない場所を見つめながら小刻みに震えていた。
(テアがこうなるのも無理はねぇ……。ソフィのあの冷酷な目は、俺達に向けられたモンじゃねぇってのが分かっていても、実際にあの目を見ちまったら言葉が分からなくても恐れ
「――」(あぁっ! テア! 怖かったのね? こんなに怯えてしまって……! こっちにいらっしゃいなっ!)
ソフィに付き従って歩いていた『力の魔神』だが、テアが怯えているのを見た彼女は、おもむろに抱き着いて頭を撫でている。
震えて動けなくなったテアを抱きしめて、優しい声を掛けながら慰め始めるのだった。
…………
「あれがソフィ殿か……」
「ああ。副総長と直接やり合っていたところを見ていたから、ある程度は理解をしていたけど、間違いなくソフィ殿は桁外れに強いね。実際に勝てるイメージが全く湧かないよ」
「無理もないわ。この場にあれだけ大勢居た中のたった一体の『天狗』でさえ、私達は苦戦する筈よ。それをあんな一瞬の内に全員を葬り去ってしまう事なんて、決して私達には出来ない……」
「とんでもねぇな……」
(ここに来る時に私はソフィ殿はいったいどれくらい強いのかと考えていたが、まさに想像以上だった。集落で天狗に向けた殺意も驚いたが、正直あんな戦いを見せられた後じゃ、戦いたいなんてこれっぽっちも思えねぇよ)
サカダイの町でソフィとミスズが戦うところを見ていたスオウは、戦えば確実に負けると断言し、初めてソフィの本当の強さというものを目の当たりにしたヒノエは額に脂汗を浮かべながらとんでもないと口にして、キョウカは自身が『天狗』の『王連』にあれだけ苦戦していたのにとばかりに、過去の『王連』との一戦とを比較しながら、改めて今この場で起きた出来事を彼女自身が記憶するように、そう口に出すのであった。
…………
「ミスズ、今回の調査で『禁止区域』とされる場所を全て把握するぞ。ソフィ殿が居る今回の調査の内にだ」
「えっ!? は、はい、シゲン総長……!」
唐突に横に立っているシゲンに話し掛けられたミスズは、その彼が見せた表情から言葉の真意に気づいた。
妖魔退魔師の総長シゲンは、初めての『妖魔山』の調査でその全てを明るみに出そうとしている。
――それは『妖魔山』の管理の権限が移ってから初めてとなる今回の調査で、未だかつて妖魔召士組織が数十年、数百年に渡って行えなかった事を成し遂げると明確に言葉にして告げたのであった。
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