第1602話 鬼人達の縄張り
ソフィ達が『
ここから『妖魔山』の中腹までは『鬼人』達が縄張りとしている場所となるため、これまでとは『妖魔』の強さもまるっきり変わる事となり、出現する妖魔のランクも『3』から『4.5』程へと上がり始める。
『退魔組』に属する『
すでに至るところに『鬼人』達が潜んでおり、その中には『
流石に同じ『妖魔山』内であれば、これだけのランクの『鬼人』ならば『イダラマ』達がうろついている事に気付く者も居るようであり、今はまだ山に侵入してきた人間が、どれ程の強さを有しているかを探っている状態なのだろう。
もしこの視線の持ち主が『イダラマ』達の事を大した人間ではないと判断した場合、自分達の縄張りを脅かす存在を排除しようと身を乗り出してくるであろう。
しかしそんな視線に晒されながらも襲って来るまでは、全くの無視を続けるという姿勢を取るイダラマ達は、自分達に『結界』を張りながら中腹を目指し続けて登っていくのだった。
…………
「また人間か……」
「ああ。麓をうろちょろしていた人間どもが去ったかと思えば、また新たな人間が登ってきやがったな」
「だが、あれは駄目だ。絶対に手を出すなよ?」
山麓で彼らに視線を送って様子を窺っていた『鬼人』達は、自分達の縄張りを堂々と闊歩するように『妖魔山』を登っていく『イダラマ』達を見て、自分達より『力』が上だと直ぐに気づいて襲い掛かろうとすることもせずに、黙って見送るのだった。
この『妖魔山』に生息する『妖魔』達は、人間を共通の敵だという認識を持っているが、ある程度ランクが高い妖魔達は相手の力量を見定めて、自分達が襲い掛かっても返り討ちにされるかどうかを見極めながら、冷静に判断して行動を取る。あくまで自分達が生き残る事を最優先に考えている様子であった。
この考え方は人間達に対してのみではなく、他の『妖魔』の種族に対しても同様であった。
この『妖魔山』に生息する『妖魔』達に対して、人間達が定めた妖魔ランクの区分が、正確に行われているのには、こういった『妖魔山』で自然に出来上がった暗黙のルールが一因しているのであった。
当然に『同胞のため』にと動く妖魔もいるが、それはあくまでも例外的で異例な事である。
「あれだけの『結界』を維持しておるというのに、まるで『結界』そのものに頼っているというわけでもないな。あれは明らかに『結界』の存在を気づける我々のような者達に対して、襲ってこなければ何もしないが、襲って来るなら容赦はしないという、あの人間達の警告めいた意識付けの『結界』のようだな」
流石に高ランクの部類に入る『鬼人』達は、直ぐにイダラマ達の思惑に気付いたようである。
「ひとまず俺は村に伝えに戻る。お前達は奴らが我々の縄張りを出るまで見張っておくのだ」
「ああ。敵意を見せなければ奴らは襲ってこなさそうだしな」
「分かった」
こうして『鬼人』達は見張りを続ける者と、同胞達の元に報告に行く者とで分かれるのだった。
…………
「こちらに視線を向けている者達の数が減ったね。どうやらあいつら今すぐに襲って来るつもりはないようだよ」
「ああ。流石にこの辺までくると『妖魔』達も知恵がある者が多い。数が減ったからといって油断は禁物だぞ? 奴らは一度こちらを油断させておいて、取り囲む為に仲間達を呼びに行ったのかもしれないからな」
「ああ、そういう事も考えるんだなぁ」
そう返事をする『エヴィ』だが、直ぐに手を口元に持って行って欠伸をするのだった。
どうやらあれだけ熟睡しておいてまだ『エヴィ』は寝足りない様子らしい。
あまりの緊張感を持たないエヴィに『イダラマ』の護衛達や、コウエンもまた呆れるような表情を見せるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます