第1473話 改革派の中でも特別な思想を抱く者
「お主ら、そこまでにしておけ」
今にもエヴィに向かって攻撃を繰り出そうとしていた『妖魔召士』達は『コウエン』の制止の声に一様に直ぐに反応して動きを止めるのであった。
「イダラマ。お前が『妖魔山』に抱くこだわりはワシと同等かそれ以上だという事は良く分かった。しかしお主が『禁止区域』に入るにあたってワシら『同志』に声を掛けたのは、自分達だけでは力が足りぬと判断したからなのだろう? それならばここでお主らだけで『妖魔山』へ向かう事は本当は都合が悪いのではないか? ここは少し我慢をしてワシらと――……」
「コウエン殿。先程も言ったが『サカダイ』に戻るのであれば、ここで別れさせてもらう。お主達に声を掛けたのは『妖魔山』へ入るという目的が重なっていたからだけに過ぎぬ。そもそも私と貴方がたは同じ『はぐれ』となった『妖魔召士』だが、その在り方と目的に対して前提条件が異なっているのでな」
「何だと……? それはどういう意味だ」
コウエンは今すぐにでも戦闘が行われようとしているこの空気を変えようとして、イダラマに自分達と共に行動をさせてこの場を諫めようとしたが、そのイダラマに否定ともとれるような言葉を返されてしまい、自分の話す内容をひとまずおくことにして、イダラマの話す言葉に素直に耳を傾け始めるのだった。
「そこに居る『サクジ』殿にしてもそうだが、この場に居る大半の者達は『妖魔召士』組織を再び『保守本流』に戻そうと行動を起こそうとしているだろう? コウエン殿は少しばかり違う思いを抱かれているようだが、私は別に『シギン』様の代の時のような『妖魔召士』組織に戻そうとも考えておらぬし、このまま『ゲンロク』を長とした『妖魔召士』組織のままでも特に構わぬのだ。あくまで私は『妖魔山』に入れるようになるのであれば何でも構わない。だからこそ私は、妖魔退魔師組織に足を運んで自らの野望の為にあえて『妖魔山』の管理権の話を持ち掛けたのだからな」
「「!?」」
イダラマの口から『妖魔山』の管理権を『妖魔召士』組織から『妖魔退魔師』組織へと移すのに一役買ったというのは、一番最初にイダラマが口にしていた事だったが、その理由が彼の勝手な野望の為だけだったと明確に告げた事で、この場に居る多くの妖魔召士達は目を丸くするのだった。
当然、この中に居る数人は自らの放った間諜によってこの情報を得ている者も居たかもしれないが、それをイダラマ自身が口にするとは思わずに居た様子で一様に驚いていた。
「イダラマ……、貴様はどこまで自分勝手なのだ!! これだから『改革派』の連中は信用がならぬのだ! 『同志』を共に助けに行かぬというだけでも気に入らぬが、自分が『妖魔山』に入る為だけに『妖魔召士』組織の重要な管理権を敵対しておる組織にさえ、平気で移させるとは! お主はやはり異常すぎる……!」
前時代の『妖魔召士』組織に属してそれなりの地位に居た『サクジ』に異常だと告げられた事で、イダラマは少しだけ顔を俯かせた。
多くの者達がそんな様子を見せるイダラマに、サクジの言葉が余程きいたのだろうと考えていたが――。
「ふははは! サクジ殿。私が異常だったら何だというのかね? そもそも私から言わせれば大層ご丁寧に昔からのしきたりや、古い慣習などに拘って新たな事柄に目を向けず、ひたすらと過去の栄光に縋り同じ事を繰り返す『守旧派』の者達こそが異常だと思うがな? シギン様やサイヨウ殿が居た前時代であればまだしも、今の大した力も持たぬ『妖魔召士』が集っている組織の時代で『禁術』や『新術』を認めず、そして一切使おうともせずに一体どうやって『妖魔』や『妖魔退魔師』達に対抗しようというのか、よろしければこの場でご教授頂きたいものだ! そもそも『妖魔』に対抗する為に編み出された『捉術』の数々とて、元を辿れば『新術』の祖型であろう? 今の完成されている『捉術』の数々もかつては『禁術』とされていた時代もあったかもしれぬではないか! 理解が出来ぬからといって頭から戒めようと動き、臭い物に蓋をするかのように認めぬ頭の固いお主の『
遂にイダラマは内に秘めていた本音を吐露するかの如く、この場でぶちまけるのであった。
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