第1458話 分かり合えない者達
(やはりこういう展開になったか……)
イダラマは胸中でそう呟くと周りに聴こえない程度に舌打ちをするのだった。
(先程私が『ライゾウ』殿達に要件をさっさと申せと口にしたときにも、彼は私に対して不満の色を浮かべていた。どうやら彼は私の計画に支障を及ぼすどころか、
イダラマは静かに『サクジ』に対しての印象を結論付けると、脳内で今後の計画に修正を加え始めるのだった。
そしてイダラマはこの『同志』達の中でも『最上位妖魔召士』の魔力を有する『コウエン』の方を一瞥する。
元々イダラマが『妖魔山』に入る際に行動を共にする上で必要だと思っていたのは、この『コウエン』であった為に、たとえ他の『同志』達がこの場から離脱して『サカダイ』に向かったとしても、イダラマ的には『コウエン』がこの場に残りさえしてくれれば何も支障はないと考えていた。
「ちっ! 仕方ねぇな……。まぁ『同志』諸君が救出に向かうっつーなら俺も行かねばならねぇか……」
「むっ……!」
ぼそりと静かにそう呟いた『コウエン』だったが、その彼を注視していたイダラマは当然その呟きの言葉を聴きとり、そして彼もまた驚きの声をあげるのだった。
(まさかあれだけ『妖魔山』に執着していた『コウエン』殿でさえ『同志』を優先するというのか。やはり『はぐれ』となった今でも彼らは、味方や同志を第一に考える『守旧派』の『妖魔召士』だったという事か……)
同じ『はぐれ』となり『妖魔山』という共通の目的を持てば『改革派』側である自分と、彼ら『守旧派』の人間とも分かり合えるものだと考えていた『イダラマ』だったが、どうやら一度抱いた『思想』の違いというものは簡単には覆ることはないらしい。
結局は自分とは別物だったかとそう判断したイダラマは、もう『コウエン』やこの場に集まっている『同志』達全員に対する興味は失せたようで、彼は冷酷ともいえる程の冷たい目を浮かべながら小さく溜息を吐くのであった。
そしてイダラマは静かに『ライゾウ』と『フウギ』の方を見ると、その両名の『妖魔召士』は他の者達に気取られないように視線を向けてきたイダラマに静かに素早く頷いた。
「そういう事だからこの場を用意してもらって悪いがイダラマよ。先に『同志』達を助けに向かうとしようぞ」
何処かイダラマの考えている思惑を見透かしているような視線を向けながらサクジは、厭味な笑みを浮かべてそう告げるのだった。
「だが『同志』達よ。本当にこのまま『サカダイ』に向かい『妖魔退魔師』組織を襲撃するつもりなのか? 確かにこの場に居るのは『コウエン』殿を含めて『サクジ』殿に他にも『上位妖魔召士』が数多く揃ってはいるが、相手はあの『シゲン』や『ミスズ』を含めた『妖魔退魔師』組織が相手なのだぞ? 分散した『改革派』の『妖魔召士』である『ヒュウガ一派』達だけだったとはいえ、当代の『妖魔召士組織』の幹部達が揃って『妖魔退魔師』に敗れたというのに、言ってはなんだが『はぐれ』となった我々達だけで向かってたとしても結果は見えていると思うが……」
今回の出来事が起きるまでは、確かに『妖魔召士』と『妖魔退魔師』組織が直接武力を伴った抗争などはなかったが、実際に『ヒュウガ一派』である当代の『最上位妖魔召士』を含めた『妖魔召士』達が揃って『妖魔退魔師』達に敗北してしまっている。
その事を例に挙げながら『イダラマ』は何とか『同志』達が『サカダイ』の『妖魔退魔師』組織の本部を襲撃するのをやめさせようとするのであった。
「その事だがな、イダラマよ。ワシの得ている情報では『妖魔退魔師』の総長、副総長を含めた最高幹部達は、今度のゲンロク達との会合後に『妖魔山』の管理権を移し終えた後、ゲンロク達と足並みを揃えて『妖魔山』の調査を両組織共同で行うようなのだ。まだこれは間諜から伝えられただけの不確定な話に過ぎないが、どちらにせよシゲン達や幹部連中が『サカダイ』から当面の間は居なくなるだろう。そのタイミングを見計らって『同志』達の求めている者達を救出すればよい。まさに千載一遇の機会が巡ってきておる。これも『同志』達を救えとばかりに、天が味方をしておるのかもしれぬな!」
そう言ってサクジは高らかに笑い始めると、もう『同志』達のこれからの行動指針も定まってしまった様子であった。
(この流れはもう覆せぬな……。存外『コウエン』殿より、この『サクジ』殿の方が食わせ物であったか)
高らかに勝ち誇ったように笑い始めた『サクジ』を見て、イダラマは胸中でそう呟くのであった――。
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