第1320話 二色の併用を扱う退魔組の退魔士

「あれは……!」


 一番最初にこの『ノックス』の世界に来た時に『加護の森』で襲ってきた者達と同じ『狩衣かりぎぬ』を纏っているところをみると、どうやら彼らがこの『ケイノト』に戻って来た目的の『退魔組』の者達で間違いはないのだろうが、ソフィはその中の一人の男が突如として纏い始めた『オーラ』を見て驚きの声をあげるのであった。


 ――何故なら、そのオーラの色は『』だったからである。


「せやぁっ!!」


 妖魔退魔師達も『天色』という『青』のオーラを纏いながら、一斉に『退魔組』の者達に襲い掛かって行く。


 先程『式』を複数体使役した方の男は、全く妖魔退魔師達の動きが見えていない。


 未だに妖魔退魔師が動く前の場所に視線を送っているところをみると、彼は妖魔退魔師達の残像をその目にまだ宿しているようである。


 あれでは何も気づかぬ前に勝負はつけられて終わるだろうとソフィは判断して、もうその男の方ではなく『金色』を纏った方の男を意識して見るのだった。


(ちっ! やっぱり本物は速度が違いすぎるな。この状態でもあっさり勝てるとはいえなさそうだし、こいつらに至っては全く見えていない)


 迫りくる妖魔退魔師が『ユウゲ』の出した『式神』達を次々と斬っていき、あっさりと『式札』に戻していくところをイツキは観察していたが、その彼らの動きや纏う『天色』の練度から自分の『金色のオーラ』で増幅させた戦力値であってもまだ足りないと即座に判断するのだった。


「このままだと、流石に『ミヤジ』や『ユウゲ』が危ないか……。全く仕方がないな!」


 妖魔退魔師達が次々とユウゲの『式』を倒してユウゲを対象に捉え始めた頃に、遂に『イツキ』が動くのであった。


 ヒノエの部下の隊士達は、遂にユウゲを守り立っていた『式』を纏めて『式札』に戻せたと判断して、そのままユウゲに斬りかかろうとしたのだが、そこでこれ以上は不味いと判断したイツキが、ユウゲと『妖魔退魔師』の隊士の間に割って入って『魔力』コントロールを行い始める。


「お前ら、駄目だ!! そいつから直ぐに離れろ!」


 そのイツキの様子を見ていたヒノエは、自分の組の部下達に声を掛けたが、もう遅かった――。


「とりあえずお前らには、その場で蹲っていてもらおうか」


 その言葉が放たれた瞬間――。


 信じられない速度で『イツキ』の可視化が出来る程の『魔力』が閃光を放ったかと思えば弾けるように輝き、そして次の瞬間には彼の周囲を目が開けていられない程の煌びやかな『金色』。


 そして驚く程までにな『』が彼の周囲を纏い始めるのだった。


「な、何だと!?」


 その二つのオーラを纏う速度は、これまでの『』を纏う者を見てきた誰よりも早かった。


 瞬きをする間に『金色』だけであった彼を覆うオーラは同時に二色の体現を始めたかと思えば、その彼は笑みを浮かべながら右手を頭上高くに掲げる。


 『ことわり』や『発動羅列はつどうられつ』が無いが故に、当然『詠唱えいしょう』何て言うものはなかった――。


 単にイツキが『ソレ』を使おうと考えて、実際に使用しただけの話。


 ただそれだけで『ユウゲ』達に近づこうとしていた組に所属する程の幹部の『妖魔退魔師』達は、一斉に地面に圧し潰されるように叩きつけられた。


 ドカンッという衝撃音と共に、地面に叩きつけられた彼らは動くどころか、全員が一様に意識を失った。


 そしてその衝撃の所為で、ケイノトの町の地面に次々と亀裂が広がっていくのであった。


「ちょっと技のイメージが強すぎたか? これは気をつけて少しは使う魔力を抑えないと、アッサリ殺しちまうようだな」


 イツキはそう呟くと生涯で二度目に使った、生み出したばかりの『捉術』の調整を考え始めるのだった。


(※生涯初となる一回目は、少し前にユウゲに『魔重転換まじゅうてんかん』の効力がどんなモノかを教えてもらった時である)。


「て、てめぇ……!」


 自分の組の隊士達が一斉に地面に叩きつけられて意識を失わされたことで、目の前の『退魔組』の退魔士の男を脅威と認めた『ヒノエ』組長は、自分の愛刀に即座に『瑠璃るり』を纏わせ始めながら、相手を睨みつけながら呟くのだった。

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